ごく普通のJCがレズキメセクにのめり込んでいく話
スーパードライ
プロローグ
「さなー!早くー!」
「ま、待ってよぉ花音」
雲の切れ間を縫って滲むような六月の夕日に照らされた校舎の下、二人のセーラー服の少女の人影が逆光に映えていた。
下駄箱の前で片足を揚げて上履きを脱いでいるお下げ髪の少女を吉川花音、その少し向こうで散乱した楽譜をあたふたと拾い上げている肩までの黒髪に黒縁眼鏡の少女は濱秋沙奈という。
どちらも中学二年生、どちらかというと小柄で華奢な方な花音と女子の中ではやや背が高い方で10代前半にしては発育がよく胸も大きい沙奈、少しばかり対照的な二人だが内気だったり人見知りなお互いにとって入学以来の数少ない親友だ。
「もー、沙奈ったら普段は真面目なのにどんくさ....」
がららららっ!
細い棒状の何かの束がバラけ落ちる音がしたのは、花音が運動靴を履き直立すると同時だった。カラカラ...と棒状の何かが転がる音が虚しく続く。
花音は音がした背後の足元を振り返りはしなかった。それどころか悟ったような顔つきで、しかし半ば赤面し口角を少し引き攣らせていた。
パーカッショニストなら誰もが通る道。ジッパーを開け放しにしていた彼女のスティックケースからドラムスティックが根こそぎこぼれ出たのだ。
ややあって耳まで真っ赤に染めながらゆっくりと振り返ると、譜面を拾う手を止めた沙奈が唖然として見つめていた。
「.......っぷ」
「....ふふっ」
沙奈が噴き出すと、花音の表情も綻んだ。
二人揃って馬鹿みたいなのがおかしくて、ひとしきり声を上げて笑いあった。
年相応に純朴で、年相応に間が抜けていて、完璧ではないけれど幸せな、そんなごく普通の青春がそこにあった。
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