第3章 魔族王国の迷子令嬢

第85話 ジャマング王国ノスロンド町

 5人の冒険者とマリエルとアダモは、『未開の迷宮』101階で転移門の魔法陣を起動して、ダンジョン入口前の広場に転移しました。


 獣人族の冒険者数人が屯しています。



「全然知らない場所です、風景にも覚えがありません。ここはいったい何処でしょう?」


「ここはジャマング王国ノスロンド町の北、シプネイル山の麓だ」



「聞いた事の無い地名です……、助けて下さりありがとうございました。皆さんのお名前をお聞きしたいのですが?」


「俺達5人の名前をまだ教えてなかったか。俺がリーダーでジルベルト、そしてマッシュ、ヘクトル、ミレーヌ、リーゼだ」



「ここから町まで馬車に乗って一緒に行こう」


「はい」



「ただ、お嬢ちゃんが人族と分かると色々と拙いから、その耳をまず隠そうか?」


「はい」



『御嬢様、それならバッグから、ケモミミカチューシャを2つ出してください』


「はい……アダモちゃん、これですね?」


『そうです、御嬢様』


 マリエルが猫耳、アダモが犬耳のケモミミカチューシャを付けました。

 2人の本当の耳は髪の毛で隠します。





 ノスロンド町の門を通る時に、身分証が無いのでお金を払わなければなりませんでしたが、私はこの国のお金を持っていませんでした。バッグの中にある沢山のお金は、この国では流通していなかったのです。


「お嬢ちゃん、俺が出してやるよ」


「ありがとうございます。お借りしますね」


「な~に心配するな。クイーンデススパイダーのドロップアイテムを貰ったんだから、遠慮しなくていいぞ。ギルドで報酬を貰ったら、この国のお金も上げるからな」


「まぁ、ありがとうございます」



「まず、教会でこの子の社会情報を見て貰おうか?」


「教会のクリスタルは拙いかもしれないわね、人族と知られたら衛兵に捕まってしまうかもしれないから」


「そうだなぁ」



「ギルドのクリスタルはどうでしょう……拙いかなぁ?」


「コネを使って時間外に見てもらおうか?」


「ギルドも俺達の頼みなら聞いてくれそうだよな?」


「そうね。故郷を探すにも認識票が無いと旅も出来ないし、冒険者登録もした方がいいわよね」



「どうだい、お嬢ちゃん。そういうことだから冒険者登録をしておこうか?」


「はい、お願い致します」



 ◇ ◆ ◇



 私達は時間調整して、閉店時間前に冒険者ギルドに入りました。

 男のスタッフがこちらを見て話しかけてきます。


「おっ、帰って来たか。101階は攻略できたのか?」


「勿論さ、楽勝楽勝。チョチョイのチョイだぜぇ」


「ほい、討伐証明部位だ。あと、買取はアイテムを吟味して分け合ってから明日持ってくるからな」


「了解だ」



「はい、こちらが報奨金です。ご苦労様でした」


 受付カウンターにいる女性スタッフから、ミレーヌが報奨金を受け取りました。



「ありがとう。あとねぇ、この子を冒険者登録してくれるかしら?」


「あら、見たことない子ね。何か認識票があればすぐに登録できるけど、何も無ければクリスタルで鑑定しなければならないわ」



「その事なんだけど、悪いけど別室でお願いしたいんだ。ちょっと訳ありでさ」


 受付嬢のシェリーはマリエルをジットリと見回しました。


「ふ~ん、この町一番の冒険者パーティ『タイガーケイブ』の頼みだから聞いちゃおうかしらね」



 リーダーのジルベルトはマリエルが持っていたアリタリカの金貨をそっと差し出した。


「まぁ、何処の国の物かしら。でも純金だわね」


「これを依頼料として受け取ってくれ」


「まぁいいの? クエスト依頼みたいだわ、貰っちゃおうかなぁ」



 シェリーがカウンター脇の扉を開けて招き入れてくれました。


「この部屋で待っててね。クリスタルを持ってくるから」



 シェリーがハンドボールぐらいのクリスタルをカートに乗せて持って入ってきました。


「お嬢ちゃん、このクリスタルに両手を当ててね」


「は~い」


 ピッキッ、ミシッ、パッリィイイインッ!



「クリスタルが割れて粉々になってしまったわ!」


「はぁ、ステータスが見れなかったかぁ」



「私のステータス見れないの? 登録も出来ないのかしら?」


 シュィイイインッ!


「あっ、何かでてきたぁぁぁっ!」



マリエル・ウォルフ・レオポルド

レベル99超

HP999超 MP999超

種族 人族

職業 学生 女神見習


パッシブスキル

【魔力消費減】LV5【魔力回復増】LV5

【自動万能魔法盾】LV5


スキル

【剣術】LV1

【投擲】LV3

【遠距離射撃】LV3

【命中補正】LV3

【貫通力強化】LV3

【光属性魔法】LV10

【火属性魔法】LV3

【水属性魔法】LV3

【風属性魔法】LV3

【土属性魔法】LV5

【時空魔法】LV5

【生活魔法】LV5

【調教】LV10

【ブラインド】LV10

【開眼】LV10

【鑑定】LV10

【復元】LV10

【修復】LV10

【錬金術】LV5

【鍛冶】LV5

【細工】LV5

【採取】LV5

【採掘】LV5

【薬師】LV5

【念話】LV3

【書写】LV3

【魅了】LV5


ギフト『虹の橋ビフレスト』通行許可書

特記事項『女神の御親友』



「どうだ、自分のことが分かったか?」


「はい、私は……やっぱりマリエルでした……」



「それだけ……?」


「えぇとぅ、個人情報なので……あのぅ、魔法使いみたいなステータスです」


「そう……言える範囲で教えてくれればいいわよ」


「はい、結構チートかもしれませんわ。おほほほほ」



「チート? なにそれおいしいの?」


「まぁ、たぶんおいしいステータスです」


「そう」



「冒険者登録するなら、せめて私だけには教えて頂戴な。私に見せる許可をステータスウインドウでするのよ」


 マリエルはウインドウで閲覧許可をシェリーに与えました。



「じゃあ、見せて貰うわね。……まぁ、なにこれ、どうしましょう、これは口外できないわ」


「はい」



「絶対に誰にも見せてはいけませんよ」


「はい」



「冒険者の認識票は特別に出しとくわ……、あなたにギルドの指名依頼を出すかもしれないから、その時は受けてね。秘密を守る為の貸しにしときますからね」


「はい」


 マリエルはF級冒険者の認識票を貰いました。






「これからどうするの?」


「どうしましょう?」



「記憶を取り戻して家に帰れるといいんじゃないか?」


「そうですねぇ」


「「「……」」」



「私は何処のマリエルなのでしょうか? どちらへ行けば私の故郷なのでしょうか?」


「「「はぁ……」」」



「とりあえず私達の拠点に来る? 宿に泊まるには、この国のお金がないとね」


「報奨金はマリエルちゃんにも分け与えましょうよ?」


「それもそうだ、むしろお嬢ちゃんの物とも言えるが、一応クエスト報酬だから等分させて貰おうかな。お嬢ちゃんは、まだクエストを受ける事が出来なかったんだからな」



「あのぅ、旅に連れて行って下さるならお金は要りません。情報収集の為に一緒に行動させてください。パーティメンバーに入れて下されば、もっと嬉しいです」


「う~ん仮メンバーって事にしとこうか。危険な目に合わせたくないからな」


「はい」



「そうだ、両替商に行って、お嬢ちゃんの持ってる金が換金出来ないか聞いてみたらどうだ?」


「そうね、明日行ってみましょう。でも今日はもう食べて寝ましょうよ、疲れてるんだからさ」


「「「賛成」」」

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