第55話 ローザンヌの冬の日常

 ハンバーグは、ちゃんと美味おいしく出来ました。

 デミグラスソースは、まあまあ似てるかな。

 タルタルソースは上手じょうずに出来ています。


 生魚は高価ですが、干し魚や塩魚ではフライに合わない為、鶏肉で唐揚を作りタルタルソースで食べました。

「タルタルチキン」と、言うものでしょうか?

 ハンバーグも唐揚もレタスを敷いてパンに挟んで食べたのです。


 フレンチフライ(日本ではフライドポテト)も塩を振って、美味しく食べました。

 残念ながらコーラは無いけど、新鮮なミルクを飲んだのです。



 私が侯爵領のキッチンから胡椒こしょうを借りたら、


胡椒こしょうきんと同じぐらいの値段で取引されているのですよ。侯爵家様の料理だけに使っているのです」

 と、料理長に注意されてしまいました。



 グリュエーレ城の料理は、地元の平民を雇って料理をして貰っています。

 作る料理も平民の物なので、胡椒のような高級食材は使っていません。

 私も毎日、騎士団員と同じ料理を食べているのです。


「物足りないと思っていたのは、胡椒が使われて無かったからなのね」


「だからハンバーグを食べたくなったんだね」


「……そうなのかしら?」



「ヨシッ! 胡椒がきんと同じぐらい高価なら、俺が毎日ジョギングして、熱帯地方まで探しに行って来るよ」


「ジョギングで!?」


「1度行った所へは【転移門】で移動出来るのだから、毎日帰って来る事が出来るしね。翌日は【転移門】で続きから始めれば良いのだから。

 毎日の魔法学院への通学で【転移門】で移動したら、マリちゃんの授業が終わるまで再び【転移門】で前日行った所へ移動して、南の熱帯地方に向かってジョギングして、帰りは魔法学院に【転移】で帰ってきて、一緒に馬車で【転移門】でグリュエーレ城に帰ろうね」



「スゴ~イ! 何日ぐらい掛るかなぁ?」


「この世界の地理が全然分からないから予想出来ないけど。いつか必ず辿り着くと思うよ」


「無理しないでね、気長に待ってるからね」


「危ない時は『マリちゃんのそばに【転移】!』で帰ってくるから心配いらないよ」


「うん、そうだね」


 ケンちゃんの新しい日課が始まりました。






 冬の石造りの城はとっても寒いのです。

 暖炉にガンガン薪をくべても、城壁の石は外を吹きすさぶ風にドンドン冷やされていきます。

 暖炉で温められた部屋の空気も、冷たい城壁の石にぶつかるとスグに冷えてしまいます。

 天蓋付きの特大ベッドに、綿を贅沢に使った布団を重ねて、サンタクロースのような帽子を深く被っても、寒くて中々寝付けません。吐く息が白く上がります。



「ケンちゃん、スズちゃん、ピーちゃんも、早く一緒のベッドに入るのよ!」


 冬のこの次期は、広い侯爵令嬢部屋はとても寒いのです。侯爵令嬢部屋と言っても城主用の寝室なのですが、一応私が城主らしいので……。

 無駄に大き過ぎるベッドはチットモ暖かく無いのです。

 ケンちゃんは人形なので布と綿だけですから、寒くは無いけれど暖かくも有りません。



 ドア横の壁際に控えている夜勤の騎士団員エリシャナに命令をします。


「エリシャナ、私が寝入るまで添い寝してくださいな!」


「ヒェッ、それでは護衛のお役目が出来ません」



「私が寝入る迄で良いのです。スズちゃんと一緒に、人肌で両側から挟んでください」


「……はい。それでは御嬢様が御休みに成るまで失礼致します」


「スズちゃんは左から、エリシャナは右から暖めてくださいね」


 ケンちゃんとピーちゃんの内側で、スズちゃんとエリシャナに抱き付いて貰いました。


「暖か~い。エリシャナは私が寝息を始めたら警護に戻っていいですからねぇ」


「はい」






 エリザが夜番の護衛任務を交代する為に、侯爵令嬢部屋に入って来ました。

 エリシャナを両手で揺さぶりながら小声で起こします。


「エリシャナ、エリシャナ、起きなさい!」


「ムニャムニャ……御嬢様お許し下さい……いけませぬぅ」


「何を寝ぼけてるのですかっ! お役目も果たさずに!」


「ヒェッ、つい気持ち良くて、幸せな気分になって、ウトウトしてしまいました」



「ほんとに、もぅ……羨ましぃ」


「えっ? 何と……」


「もう良いから、部屋から出て行って顔を洗ってきなさい!」


「はい」



 エリシャナが顔を洗って戻ってくると、エリザがマリエルに添い寝をしていました。


「お姉様! 自分だって添い寝してるではないですか!」


「私だってズット添い寝したかったのです」


「はぁ……おあいこですね。他の団員には内緒です」





 領主(仮)としての御仕事として、ローザンヌ地方に食料配給所や休息所を作りました。

 町や村、集落などの空き地にホールを建てたり、住人が居なくなった空家を再利用させてもらい食料配給場所などにしました。

【転移門】でパンとスープを運んで、身寄りの無い人や食事に困ってる人に提供します。

 昼間なら何時でも食事を取れるようにしています。

 家を失った人が安心して寝れる場所を作りました、ベッドと服も提供しています。



 牧場の見習いとして働くにはチョット早い10歳ぐらいまでの孤児対策に、薬草採取を教えています。

 町や村の周辺でグループで行動してもらい保護者を付けているのです。

 午前か午後の2,3時間だけ、薬草採集をして貰っています。


 学校を作って、孤児達に国語と算数だけでも勉強して欲しいと思っています。




 ある暖かい日のお昼過ぎ。

 フレニは羊を放牧している間に、草原に座って絵を描いていました。

 それをマリエルが、後ろからソット覗きこみます。


「まぁ、上手ですこと!」


 マリエルはフレニの絵に感動しました。 



「フレニちゃん、需要の多い薬草を数枚描いて下さいな。孤児の薬草集めの参考にして貰うのです」


「はい。よく使う薬草でしたら、体力回復や魔力回復、毒消しに使う薬草などですね」


「そうですわね。1枚につき1銅貨を支払いますから、薬草採集する子供に渡して上げて下さい」


「畏まりました」



「フレニちゃんを『薬草採集先生』に任命致します。お給金をお支払い致しますわね」


「はい、お役に立てると良いのですが……」


「時々、採集をしている子供にアドバイスして下されば良いのです」


「畏まりました」



 持ち主の居なくなった牧場を引き取って、成人前の孤児達に畜産実習をして貰いましょう。経験者の大人に指導して貰うのです。


 畑や農場も、最初に私達の土属性魔法で開拓して、無人の牧場、畑、空き地等も再利用します。

 ビニールハウスを作って、温泉を引いて内部を温めて、冬でも野菜を栽培したいですね。


 道路、橋、トンネル、集会所、農業用溜池、用水路、排水路、街灯を整備しましょう。


 ポーション店、魔道具店、武器鎧店を新設して、私が作ったり所有しているアイテムを売り、仕事の無い者に働いて貰いましょう。

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