第46話 聖女と呼ばないで!

 レオポルド侯爵領の各街の市場には、沢山のお店が出ていて、年々出店数も増えています。

 場所取り、無許可、粗悪品販売、詐欺商法等が起きるので、『市場出店法』と言うルールが出来ました。


 市場のお店には、1軒1軒に小さな木札が置いてあり、店の屋号やマークが書いてあり、買い物をした客に1つ渡す事が義務付けられています。

 客は市場を離れる時に、それを『集計箱』に入れなければなりません。

『集計箱』は5種類並んでいて、星1つから星5つ迄あり、木札を入れると、その店を評価した事になります。

 1週間に1回結果発表されて、全てのお店のランキングが掲示板に貼り出されます。

 総合ランキングと販売商品別(食品、衣類、道具、雑貨等)ランキングがあります。

 特にペナルティや表彰はしませんが、評価の低い店は自然淘汰されてしまうのです。

 集計後の木札は収税人に渡されて、税金徴収に役立てられ、組織票や自演乙を防ぐ事もできます。

(不正をすると利益が出て無いのに、税金を納めないと成らなくなるので)

 因みに税率は10%だそうです。


 評価が低くても木札が多いと売れている事になり、評価が高くても木札が少ないと売れてない事になります。

 売上と評価は必ずしも一致しません。

 ただし、評価も売上も低ければ商売を続けられないでしょうし、評価が高ければ売上は徐々に伸びる筈です。


 苦情箱も有り、内容を衛兵が吟味して調査をして、注意したり捕まえたり退去させたりもします。


 亜人達は真面目に堅実に商売をする者が多く、遠方から訪れる者が結構います。

 人族でも亜人でも、評価合計の星の数が多いお店から、出店場所を選ぶ事が出来ます。

 お店は星の数を表示する事も出来ますし、そうする事で商売がし易く成るそうです。


 又、客側に付いても調査しています。

 クレイマー、暴力、暴言、嫌がらせ等は捕まえて場外追放や出入り禁止にする事もあります。

 お客とお店と街が、お互いにウインウインになって欲しいですね。



 人口が増えて、家も増え、町や集落も出来るので上下水道も整備しました。

 上下水道を整備するのは疫病対策でもあります。


 犯罪が増えないように街灯も増やします。魔道具街灯で、魔力を充填しておくと夜に光るのです。

 近くに住む者に順番に魔力を補充して貰います。


 高原地帯は風が吹き降ろすので、風力発電で街灯を点けるのも良いと思い設置してみました。

 30センチぐらいの風車で、鉄と磁石と銅線で作った発電機を回します。

 風車と発電機は直結で、5メートルの高さの木製ポールの上に設置して、ライトもスグ下に設置します。

 電線は引きません。ライトを灯すだけの発電量を得られる風力発電です。


 しかし、これがとても街の発展に効果が有ったようです。

 人々の移動と行動時間が大幅に緩和されたのです。

 人と物の移動が増えるだけで経済が動くのでした。

 日本でも、料金所やガソリン税を廃止したら、景気が良く成るかも知れませんね。


 えっ、12歳の子供が何言ってるの? って、私本当は29年も生きてますから、風力発電や電磁コイルの実験だって、中学校で経験してますよ。

 それにケンちゃんも日本での知識を持ってますからね。


 オーバーテクノロジーなんて気にしません。

 住民の生活向上の方が大事ですから。






 王都と領地を行き来して分かった事ですが、私が王都に居る間は、野菜等が豊作になるのですが、夏休みに領地に帰ると普通に戻るようです。

 そして私が王都に戻ると又、豊作に成るのです。


 レオポルド侯爵領は毎年豊作で、右肩上がりを維持しています。病害も発生しません。

 周りの大人たちも、その事に気付き始めてるようです。


 課外実習で私が訪れた場所は、花が咲き乱れ、収穫が増え、魔物が減るのだそうです。

 牛の乳の出が良くなり、鶏は卵を良く産み、家畜は沢山の子供を産むそうです。


 噂を聞いた街から、課外実習に来てくれと申し込みが来る程だそうです。



 エイルちゃんを崇め奉る神殿教会本部も、私に聖女に成って欲しがってるようですが、侯爵令嬢なので、強制出来ないみたいですけど……。



 神聖アリタリカ帝国は、女神エイルの名の元に、世界を1つの国と見なす宗教国家です。

 アストリアの南側、アルプ山脈を越えると大海に面して温暖な土地が有り、そこに神聖アリタリカ帝国があります。

 アルプ山脈は高く険しく行き来するのは難しいのですが、世界中から聖女候補が集められているそうです。

 アストリア王国の聖女も勧誘されて引き抜かれる事があるという話でした。 

 聖アリタリカ神学院は聖女となる為の学校なんだそうです。



 聖女達は春に成ると領地を巡り豊作祈願をします。

 秋には収穫祭がありますが、そこには来ないそうです。

 しかし、飢饉や疫病が度々起こるので、その恩恵は少なく形骸化していると言われてます。

 当然神殿の権威と権力も以前より落ちているそうです。


 ところが、マリエルが関わった土地が豊作になり、疫病や飢饉に成らないので、神殿は困惑してるようです。



 もう3年間も、アストリア王国は飢饉も疫病も起きていません。

 マリエルが休暇になると学友の領地に遊びに行くので、知らないうちに国中の飢饉や疫病を防いでしまっていたのです。


 しかし、今でもフランク王国、アリタリカ帝国では、しばしば飢饉や疫病が発生しているのです。



 アストリア王国は、フランク王国やアリタリカ帝国よりも繁栄する様に成りました。

 領土が増え、資源が増え、水利が整えられ、インフラ整備がされたのだから当然です。


 しかし人々は、その要因を『女神の御親友』だと思い始めているのです。


 私のステータスの職業欄には、『女神見習』なんて困った文字が増えてしまいましたが、お口チャックですね。

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