第32話 リヒテンシュタインの夏休み
ウォルフスベルクに帰ってきました、2ヶ月間の夏休みです。
ケンちゃんもスズちゃんもピーちゃんも、とても嬉しそうです。
夏休みの宿題は有りません。アメリカみたいですね。
ウォルフスベルクのお城は夏は熱いので、家族と3従魔と一緒に高原の別荘で過ごします。
勿論、毎夏訪れてますよ。
本編に関わる出来事があまり無かったので、触れてこなかっただけなのです。
辺境伯とは国境を守る重要な立場なので、お城も立派ですが別荘もかなり大きいのです。
もしもの時には防衛拠点に出来る様に作られてると言う事です。
『別荘』と呼ばれてますが、小高い丘の上に聳え建っているお城の佇まいなんです。
丘の下には川と湖があり、自然の要害に成っています。
遠くから見ると、物語の中の洋風のお城そのものです。
夏休みの2日目に、ウォルフスベルクのお城から別荘の有るリヒテンシュタインの高原の町に、馬車で向かいました。
長旅を終えて、別荘のリビングでお茶を飲みながら寛ぎます。
「お父様、農業用水路をマルグレーテちゃんのロゼリアル公爵領まで延長して欲しいのです」
「公爵領へ……他領の為に税金を使う事は出来ぬのだが、我が領地内の水路を改善する事にしよう。その結果、公爵領の渇水対策になる様にすれば良い」
「堤防を築いて溜池の貯水量も増やして欲しいのです。そうすれば、双方の十分な農業用水を確保出来ます」
「良かろう。ただし公爵領の水路も整備しないと、今までの物では大雨で氾濫するかもしれないぞ」
「公爵領の水路を広げて護岸工事をするだけなら、私達の土属性魔法で結構出来ると思います」
「ふむ、公爵領の工事は良く話し合って、あちらの税金でやって貰えばよい。掘削と護岸も魔法でやってしまえば、後はそんなに費用は掛らぬだろう。ワシもマリエルも土属性魔法が得意だし、魔力量も多いからな」
『マリエルちゃん、隣の公爵領の人達を助ける事は、素晴らしい事だわ! 水が良くなれば作物が育ち、疫病も減るでしょう』
「こんにちはエイルちゃん、マルグレーテちゃんの住む町も去年の水不足で大変だったらしいから、役に立つと思ったの」
『私からも、お手伝いと感謝の気持ちで【魔力消費減】と【魔力回復増】のスキルをあげるね。水路の改善工事に魔力を沢山使うから、きっと役立つでしょう』
「ワ~イ、どうもありがとう! 工事がんばるね」
我が領は国境の山脈沿いに有るので、自然の地形と勾配を利用すれば公爵領まで水路を引く事が出来ます。
公には他領の為に税金を投入出来ないので、自領内の水路にだけ財政を使い、公爵領の水路は私達の魔法で出来る範囲の整備をする事にしました。
勿論ロゼリアル公爵から大変感謝されました。
この話を聞いた国王陛下も治水に興味を示し、直轄領全てで治水工事をする事になったそうです。
私のお父様も相談に預かったと言ってました。
夏休みは長いので、魔力量を確認しながらのんびり工事しました。
貴族は民を守らないといけませんよね。
ノブレス・オブリージュ「高貴さは義務を強制する」と言われてるそうですから。
魔法で掘削して、その土で堤防を盛ります。
そして崩れ難くする為に表面を石化します。
自然の地形を利用しますので、無理に直線にしませんが、そうする事で魔力量も節約出来ますし、急なカーブをつけると堤防が弱く成るので、なるべく緩やかにするのです。
夏休み3日目に下見をして、4日目に会議をして、5日目から作業を始めて、1ヶ月程で完成する予定です。
涼しい午前中だけ作業して、午後はマッタリします。
週末は作業を休みましょう。
「お父様、私はエイルちゃんから土木作業の為に新しいスキルを貰いました」
「ほぅ、有り難い事よのう」
「お父様、私は変身して土属性魔法を使いますね。魔法を人に見られて聖女認定されたくないのです」
「ふむ、人前で派手に魔法を使うと噂になるからのう」
「向こうの木陰で魔法少女に成りますので、ちょっと待っててくださいね」
「はぁあ? 魔法少女!?」
私はケンちゃんを抱いたまま、小走りで木陰に入り変身します。
幼いころに見たアニメの変身シーンを自分でアレンジしてみました。
『マリエル パラリル ドキリンパ! キラリン キララン マリルンパ! シルキーパッチで魔法少女にな~れ~!』
キラキラキラリリリィィィンッ!
「魔法少女クレセントマリー、見参!」
「マリちゃん、『見参』ってライオン○みたいだよ」
「あらケンちゃん、女の子は『見参』って言わないの?」
「言わないと思うよ」
「じゃあ、『推参』は?」
「それは、タイガーショーだね」
「じゃあ、『参上』は?」
「それは垢影だね」
「う~ん、何があってるのかなぁ? 子供の頃ケンちゃんと見てたビデオは、昭和の変身ヒーローばかりだからねぇ」
「星に変わってお仕置きよ! とか、かな?」
「じゃあ、『三日月がメッ! だからねっ!』って言うのはどぅかな?」
「うん、まぁいいんじゃないかな。皆が待ってるから戻ろうか」
「うん」
「あれ、俺も何か変わった気がするよ!」
ケンちゃんはステータスを確認します。
「
「そう言えば、コンパクトを使って魔法少女に変身すると3従魔にも影響が有るって学院長が言ってたと思うよ」
「やったぁ、何か凄く強そうだよ」
「良かったねぇ」
〇 ▼ 〇
「か……」
「か?」
「かわいい……」
変身した私を見たお父様の両手がワナワナと震えています。
「マリエルなのか?」
「はい、お父様」
「ウオッホン。とても似合っておるぞ」
「ありがとうございます」
小さな声で何か言ってます。
「ギュッとしたい……」
「えっ?」
「ギュッとさせておくれ?」
「はい、親子ですから遠慮なくどうぞ」
「ロリ?」
ケンちゃんが首を傾げました。
「ちっ、違うわいっ。親子愛じゃ!」
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