327 枕
目的の雑貨の場所を聞いて来て見たのは良いものの、開いてない。まあ雑貨の仕入れなんて食料と比べれば後回しになるだろうし、すでに在庫が切れてるかのうせも高いわな。
だがしかし、俺のカンはまだ枕があると言っている。
ガンガンッ
「ごめんくださーい」
ガンガンッ
「買い物に来ましたー」
、、、
ガチャッ
「なんだ、客か。売りもんなんてもう残ってねーぞ」
「いえ、雑貨は雑貨でも枕が欲しいんですが、ないでしょうか?」
つい丁寧に話してしまった。いや、俺も初対面なら丁寧に話すこともあるんだよ?
「枕?中古でいいなら売ってやってもいいぞ?」
「本当ですか?おいくらでしょう?」
「そうだな、一つ銀貨5枚で二つまでだ。どうする?」
「買います!」
「まいど、ちょっと待ってろや」
そう言って中に入ってしまったが、俺の耳は階段を上がる音を拾っている。在庫が2階にあるのか?普通は2階は住居スペースなんだが。
少しして店主が戻ってきた。
「ほら、これだ。中古だから汚れてるけど嫌なら買わなくてもいいぞ」
いや、十分だ。今は中古だろうがなんだろうが、持ってるだけでいい。ちゃんとしたのはベスラートについてから買いなおせばいいのだから。これは俺の自己満足だ。
「じゃあ、銀貨10枚です」
「おう、まいど」
「、、、ジン様、言おうか迷ったのですが、その枕はあの主人の、、、」
「マリア、彼だって生活にお金は必要なんだ。売れるものはなんだって売るさ。俺はこの枕でもいいと思って買ったんだ。それ以上は言いっこなしだ」
「はい、すいません」
多分あの枕は店主の家族が普段使っているものだと思う。だけど、それすらも売らないと生きていけないのだろう。銀貨10枚程度で生活が上向くとは思わないけど、麦が何袋か買えるんだ。ちょっとはマシな生活が出来るだろう。
いかんな、慈善事業は俺の領分じゃないんだが。
ヤパンニが潰れれば良いと思ってたけど、実際に住民が困窮してるのを見るとかわいそうになってくるな。
ふむ。インベントリにまだ在庫があるな。セルジュ様に相談するか。
「セルジュ様、今日すぐで申し訳ないんですけど、炊き出しをしませんか?」
俺は宿に戻ってすぐにセルジュ様に相談した。
炊き出しは国か教会がやるものだ。以前セルジュ様も炊き出しをした事があると言ってたからやり方は知ってるだろう。
「炊き出しですか?今のこの街に炊き出しするほどの食料は余ってないはずですが」
「材料は俺が出します。十分な量ではありませんが、麦がゆくらいは出来るでしょうし」
「もしあるのならしない理由はありません。
教会にも人を出してもらいましょう。多少お布施をはずめば食糧の出元も探られないで済むでしょうし」
教会も金次第ってか。その延長線上に腐敗があるんだけどね。まあ俺のインベントリがバレないならそれで良いんだけどね。
それからは急いで準備した。日が暮れるまでに配り終えないと、灯りを着けないといけなくなる。薪なんかも不足してるだろうし、それは避けたい。
教会には金貨1枚と麦袋を一袋寄付したら喜んで手伝ってくれるそうだ。
教会への配給は一般家庭と同じで、炊き出しなんかに必要な物資はわざわざイングリッド教国から送ってもらってるそうだ。
なので十分な量を提供できず、毎回奪い合いになるとか。
街は現状、街全体がスラムになってるようなものなので、一食とはいえ、炊き出しがあれば群がってくるらしい。
ちょっと失敗したかな。
普通の炊き出しと同じに考えて事前事業を提案したけど、奪い合いになるほどとなると、警備もつけた方が良いかもしれない。ちょっとこの街に着任したと言う貴族と話をつけてこようか。
「、、、と言うわけで炊き出しをしたいのですが、衛兵を回してもらえないでしょうか?」
「うむ、その心意気、立派である。衛兵はすぐに向かわせよう。
それでどのくらいの量出せるのか?」
「だいたい大鍋5杯分くらいでしょうか。麦がゆですのである程度水増しもできるでしょうが」
「塩はあるのか?」
「それは大丈夫です」
「塩に余裕があるなら少し分けてもらえんか?明後日にはベスク王国からの使節が到着するのだが、麦は確保できたのだが、塩が足りんのだ。
海沿いで塩が足りなくなるとは思ってなかったので準備しておらんかったのだ」
ああ、この人、ヤパンニ王国の塩の品質が最低なのは知らなかったのか。砂が混じってるくらいだしな。あれは酷かった。
「では、一坪融通しましょう。足りますか?」
「十分だ。礼は何か良い?金貨か?」
この街は物不足だからな。金貨持ってきて現地で調達しようと思ってたら物がなかったってところか。
「いえ、町外れにある宿があるのですが、商人が品物を持ってきたら優先的に回してあげてもらえないでしょうか?今泊まってるのですが、結構気に入りまして」
「そんな事で良いのか。分かった。任せておけ」
「よろしくお願いします」
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