076 リリア様走る


俺とクレアは伯爵邸に来ていた。

リリア様の戦闘訓練のためだ。

マリアは、家の掃除があるということで、お留守番だ。


「リリア様、まずは走りましょうか」


「え、模擬戦を行うのではないのですか?」


「ええ、しかしリリア様には体力が足りません。

このままでは旅どころではありませんので、体力作りの一環として走っていただきます」


リリア様は絶望的な顔をしている。


「マリアにも毎日走らせれていたでしょう?

これも同じです。裏庭を3周ほどしてもらいましょうか」


リリア様は真っ青だ。


「あ、あの、この裏庭、見た目よりも広いのですが。。。」


「だからいいんですよ。クレア、付き合ってあげてくれ」


「了解だ」


「では、リリア様、始めてください」


俺は容赦無くリリア様をランニングに向かわせた。

1周目でふらついていたのが、2周目でダウンした。


「そうか、最初から3周は無理があったか。

だけど、最終的には10周できるように、ちょっとづつ増やして走らせてくれ」



俺は、リリア様がなんとか立ち上がれるまで待った。


「リリア様、体力も回復したようですし、模擬戦を始めましょうか?」


「これからすぐにですの?少し休憩を」


「今、休憩したでしょう。

大丈夫です、立てるなら模擬戦はできます。

それに、疲れているときに動けないと、死にますよ?」


「ジン様。。。」


「そんな悲しげな顔をしてもダメです。

クレア、始めてくれ」


クレアに模擬戦を命じて、俺は訓練を見ている。


リリア様は、型はできているが、応用が全くできていない。

疲れているのもあるのだろうが、指導が必要だろう。


「クレア、リリア様の動きの良いところと、悪いところを、その度に指摘するようにしてくれ。

ミスしてすぐに注意すれば、治りやすいからな」


30分ほどして、リリア様がダウンした。


「リリア様、今日はこのくらいにしましょうか。

初日にしては頑張った方ですが、もっと体力つけないとダメですね。

明日から、少しずつ、走る距離を増やしますので、そのつもりでいてください。


それと、辞めるのはいつでもできますよ?

一言言ってくれるだけでいいです」


「いえ、頑張りますわ!

ジン様との旅のためですもの!」


そう言いながらも、足は生まれたての馬のように震えている。


「クレアご苦労様、お前も俺と模擬戦しておくか?」


「ぜひ、お願いします」


俺とクレアは向かい合って、立った。


「いつでもいいぞ」


クレアは一気に攻めてきた。

大上段からの切りおろし、横薙ぎの攻撃。しかし、全てさばいた。

クレアの大剣は予想しやすいのだ。


「クレア、もっとフェイントやコンパクトな振りを心がけろ。

攻撃の度に隙ができてるぞ。

それと、攻撃に対する防御が下手だ。

これから攻撃するから、避けるなり、受け流すなりしてみろ」


俺はクレアがギリギリ反応できる速度で斬りかかる。

予想通り、受け流さず、がっつりと受け止めている。


「クレア、うけながせと言っただろう。

受けるだけだと、敵の隙をつけないぞ!」


どんどん攻撃するが、全部反らせずに受け止めていた。

クレアの防御技術の成長も考えないといけないな。


「クレア、受け流す時は、攻撃面に対して、斜めに剣を当てて、滑らせるようにしろ。

避けれるものは避けろ」


クレアも理屈はわかったようだが、なかなか出来ない。

クレアにも特訓が必要だな。


「クレア、剣をまず、まっすぐ構えてみろ。

俺がこうやって攻撃したらどうする?


そう、そうやって、受け止めるよな。

その剣を30度ほど手首を曲げて流してみろ」


俺は速度を落とした攻撃を仕掛け、クレアに受け流させる。


「そうだ、そのタイミングだ。

受け流しができそうになかったら、相手の力の乗らない瞬間に、横から当てて、軌道をそらしてしまえ!」


クレアも徐々に受け流しがどんなものか分かってきたようだ。

だが、どんな攻撃でもイナせるようにならないと、冒険者として成長はない。


「続けるぞ。

なんども言うが、攻撃は正面から受けずに、受け流す、外に弾いてしまえ」


クレアも頑張っているが、なかなかタイミングがつかめないようだ。


「クレア、今日はこの辺にしておこう。怪我してもバカらしいからな」


「はい。。。うまくできなくて申し訳ありません」


「最初から何でも出来るやつなんていないさ。

明日からも模擬戦は続けるから、少しずつ慣れれば良い」


そう、別に今日習得する必要はないのですある。

なにせ、ひと月以上、時間があるのだから。


「クレア、リリア様、今日はここまでにしましょう」


「リリア様、クレアと俺の模擬戦を見て、どう感じましたか?」


「なんか、凄いとしか。。。」


「今はそうかもしれませんが、実力がつけば、リリア様にも出来るようになります。

まずは、模擬戦を見て、どう言う動きをしているかを考えてください。

こう言う時は、こう避ける、などです」


「わかりましたわ。

それで、ランニングは毎日ですの?

明日は間違いなく筋肉痛ですのよ?」


「ええ、体力づくりは継続してこそ意味があります。

リリア様には毎日走っていただき、体力の底上げをしてもらいます。


十分に体力がついたなら、訓練方法を変えますので、ご安心ください」


「体力がつくまで、私の体がもつかしら。。。」


まぁ、頑張れとしか言えないので、特に答えなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る