足並みを揃えて歩く鰐

 黒スーツの集団がぞろぞろと不規則な列を作り歩く。


 それは意図してできた列ではないが、服装の統一感がまるで一つの団体のように見せていた。


 頭から足先まで黒。


 通勤時間のスーツ集団は気味が悪いほどに統一されている。


 僕はそんな人たちを横目に見ながらジーンズにチェックのシャツを着て自転車で通り抜ける。


「俺も就活が始まるとああなるのかなぁ」


 少しばかりの不満と少しばかりの不条理さを感じながら大学へ向かう。


『ダイバーシティな世の中に!』

『個性を認め合おう!!』


 そんな文言を掲げている大学の掲示板の横を通り、駐輪場に着き5000円で買った自転車を止める。


(大学生でいられるのも後2年か……)


 不毛なことを頭に思い浮かべ、講義棟へと足を向かせる。

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