自家製チーズが出来るまで

 1日の終わりは、町で買った安いリキュールとチーズ。

 ただのチーズじゃない、自家製チーズだ。

 そのままだったり炙ったりと日によって違うが舌鼓を叩いている。


 こんな生活を数十年続けているが俺も後先考えなければならん時期かもしれない。妻には先立たれ、息子たちは外に家庭を持っている。この農園にはもうずっと俺一人だ。もし俺が急に死んだら残された牛たちは誰にも世話されず死んでしまうだろう。子ども同然の牛たちにそんな思いはさせたくない。


 葉巻をふかし、浮き出た煙は窓の外から入り込んできた風にさらわれ消えてしまう。少し暖かみのあるその風は、なんでも運んで行きそうな感じがした。

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