小さな幸せ。

 朝日よりも早く起き、私は家を出る。


 少し肌寒さを感じながら玄関の前で屈伸をする私は、今日のデートのことを考えていた。


 アスファルトを蹴り、時速10㎞で進む。

 バイパス沿いの歩道を抜け、少し大きな公園に向かう。

 まだ暗いのにご高齢のお爺ちゃんから若い女性まで、自分のペースで歩いたり走ったりしている。

 私もその輪に加わり、公園を1周する。


 今日は午前中に映画を見て、お昼は何やら良いところのお店を予約しているらしい。

 胸が高まるがまぁまぁ落ち着いて行こう。


 少しスピードを落として走る。

 日が届き始め池の水に反射し、錐体細胞が活性化する。

 その嫌じゃない眩しさを横目に走る。


 お昼食べた後は特に欲しいものはないけれどお洋服を見たいな。

 可愛いものはいつ見たって可愛いものだ。それだけで心がときめく。

 夜は……。

 呑む。

 良いお酒が手に入ったんだ。しめしめ。


 コーナーを曲がると気づいた。

 虹が出ている。

 そんなに大きくはないが、私の心を揺さぶるには十分だった。


 ペースを上げ、ひとしきり走ると歩きながら家に帰ってシャワーを浴びた。

 今日はどの洋服を着ていこう。


 なんてことを考えながら、シャンプーボトルの頭を押した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る