第129話 違う手に出ると負けフラグ?
相手チームは後藤、堂園、砂田と、クラスで割と目立つタイプの三人組。彼ら彼女らの対戦が、一回戦ラストを飾る。五ゲーム行うのは元々定めたルール通りである。勝ち越したチームが二回戦進出だ。
出だしは、一戦目、二戦目と続けて引き分けるという珍しい展開になった。ともに三つ目の役が全くの同格(同じ数字でもスペードを含む役が一番強い、もしくはハートが一番強い等とするルールもあるようだが、3vs3ポーカーでは採用していない)で、なおかつ賭けていたポイントも同じ案配だったせいである。
「勝負中、どちらかのカードを見てみたいんだが」
三戦目、カードが配り終わったところで、私は興味本位で言ってみた。記録を付けるためという意味合いも無論あるが、一番は天瀬がどんな考え方で手役を作っているのか、知りたくなった。そんなこちらの気持ちを読んだかのように、天瀬が真っ先に手を挙げ、言った。
「男子の方にサインで教えないって約束してくれるんなら、見てもいいよ」
「教えんよ。そんな相談をする暇すらなかったろ」
苦笑交じりに否定する。私は軽く受け流したのだが、男子チームがちょっと色めきだった。
「みくびるなよ。そんな反則しなくたって勝てらあ」
後藤が怒ったような口ぶりで啖呵を切ったかと思うと、堂園は髪をはらりとかき上げ、
「疑われたことが悲しいし、侮辱だよ」
と自尊心を傷つけられた風に首を振り、芝居がかって肩を落とした。天瀬が、「ごめんね、軽い冗談だと分かってくれると思ったから。許して」とウィンクしながら謝ると、堂園は「いやいやいや、こっちも冗談で言っただけだから」と、嬉しそうに両手でバイバイするみたいな仕種をやった。
そしてこういうケースで真っ先にかみついて行きそうな砂田が、意外とおとなしくカードに集中している。本気で優勝を狙っている、そんな雰囲気だ。
とにかく、私はまず、天瀬の手札を後ろから覗かせてもらうことになった。最初に配られたのは、スペードのQと3、ハートのJと10と7。
ここはハート残しかな? 悩むとしたらスペードのQも残すかどうか。数の大きなカードをなるべく残すという戦略を採るのは常套手段と言えよう。他の二人の手札が分からないんだし、違うマークのカードがあって役立つことは期待できる。
その予想通り、天瀬はスペードの3を捨てて、新たに一枚をもらった。考えが一致した気がして、何となく嬉しい。で、新たな一枚はハートの4だった。
次に君津、棚倉の交換済みのカードも併せて見る。
君津 ハートのK ダイヤのK スペードのJ クラブのJ、7
棚倉 スペードのK ダイヤのQ、J クラブの6、3
天瀬 スペードのQ ハートのJ、10、7、4
おっ、これはかなりいいんじゃないか。Jが四枚揃っている。さらに、Kが三枚にQが二枚。これだけいい手だと、作るのも比較的簡単だ。Jのフォーカードは固定で、K三枚に7が二枚のフルハウス、そしてQのワンペア。天瀬達のチームも同じ結論になった。
残るはポイントの割り振り方だ。第一戦、二戦と引き分けているのは、とても素直に強い役には高め、弱い役には低めの点を掛けたのが原因と言えなくもない。第三戦では目先を多少変えたポイントの賭け方をして、勝ちを取りに行きたいところか。でも絵札のフォーカードがあると、それこそ正攻法で大丈夫な気もする。
結局、制限時間いっぱいを使って天瀬らは、フォーカードに二点、フルハウスに五点、ワンペアに三点を賭けた。フォーカードを弱く見せて、相手の強い手を呼び込み、取って食おうという狙いだな。
対する男子チームは、後藤の持つ手札に三点、堂園の手札にも三点、砂田の手札には四点を賭けてきた。どんな役ができているのか知らないが、この順不同で4-3-3に割り振る配点はこれまでの二戦と全く同じである。目先を変えてきた女子と、変えなかった男子。どちらに吉と出るか。
この第三戦は男子側から選ぶ番で砂田が先鋒として名乗りを上げた。
「俺、読めたぜ」
しばらく黙りこくっていた砂田は、ここに来て不敵に笑った。
「その一番低い点のが一番強いんじゃないか?」
うっ。ほんとに読まれている! 変化は怪しまれるっていうことか。
つづく
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