第52話 主役になれない人のうた

どうしても人を傷つけてしまう人がいるものだ

口を開けば嫌味が出てくる

そのくせ自分ではけっこう優しい人間だと本気で思っていたりするもんだから

他人から嫌われたりするとショックのあまりついつい悪口を言ってしまうという悪循環


口癖は「みんな逃げていく」。

そりゃそうだろうよ

誰だってきつい事を言われるのは嫌だろう

知っているかい

君が人間だとするならば

僕も人間なんだよ


この世に悪人なんかいないというならば

善人もいないという事になるんだろうな

何者でもない人間がひしめき合って

ただうじゃうじゃ生活している


ありんこの巣穴を覗いてごらん

それが人間社会の真実なんだよ


想像力は麻薬

魔法という名の現実逃避は

代償が高くつくよ

そう

それは

鏡に映った自分の顔なのさ

まだまだ子供なのに

知らない年寄りがそこにいるんだ

まるで悪夢だぜ


気が狂いそうかい

そりゃそうだろうよ

一緒に泣く人はいるのかい

もしもいないなら

そう

君と同じ色の言葉を

探せばいい

むなしい気持ちは消えないだろうけど

いっときの気休めには

なるだろうからね

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