第49話 殴り合い

髪を振り乱し

つかみ合いを

しました


てめえなんだこのやろう

そっちこそなんだすかしやろう

おさとがしれるぜげろうめが

もっぺんいってみなくそやろうが


ふつうの大人は

殴り合ったりするまえに

顔が見えない距離を

保ちます


だけど

のっぴきならない

事態に追い込まれ

仕方なく喧嘩を始めるのです


おまえなんだこのやろう

うそばかりいいやがって

よくもまあへいきなもんだな

そういうのをさぎしっていうんだぜ


いいがかりはよしてちょうだい

あたしはうそがつけないにんげんなのよ

ちょっとあんたいしゃに

みてもらったほうがいいわよ


オラオラ何言ってやがんだあのキチ○イ

どうしちゃったのあの人

見物人の野次が飛びます


両陣営は固唾かたずをのんで

見て見ぬフリを

いたします


とんちきやろうめが

きさまはくちからうまれてきたにちがいない

うそがつけないなんてふいてることじたいきさまが

おおうそつきのしょうこだぜ


あげあしとりやめてほしい

なにをいってもしんじてもらえない

あたしはただみんなとたのしく

いきていたいだけ

あんたのいないせかいでね


余分な一言が出たところで

とうとうつかみ合いが始まりました

女でも男でも関係ないと

頭突きをする

鼻がつぶれる

血が流れる


人々は言いました

先に殴った方が悪いのだと

そして喧嘩はとりあえず

終わったのでした


動物のようだった人はその後

人間の顔をしてしれっと

仲良くできる人同士で

楽しく過ごし……



ませんでした


なぜそうなったのかは

殴り合いをした人にしか

わからないのです


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