第2話 怪しい土建屋がポスターを作る話

若いヤクザ者二人が頭を突き合わせて悩んでいた。

二人は上司から、表の商売で使うポスターを作れという指示を受けていたが

迫る提出日に対して、作業は遅々として進んでいなかった。


A「おい、どうすんだよ」

B「どうすっかなぁ」

A「俺ら、ポスターなんて作ったことねぇしな」

B「ガキのうちに文化祭とかでやっとけばよかった」

A「事務員募集のポスターと文化祭のポスターじゃ話が違うだろ」

B「あーあ、なーにが”安く使えそうな奴が来るポスターを作れ”だよ」

A「”頭悪い女をひっかけろ”って、そんな露骨なことしたら大炎上だろうに」

B「ま、燃えんのは俺らだからな」

A「いつも下っ端に押し付けやがる」

B「下っ端の給料なんて、面倒ごとを押し付ける分の駄賃だろ。どこも変わらねぇ」

A「俺らも押し付けるし」

B「このポスターで押し付け先が集まりゃいいけどな」


A「つか、炎上とか知らねぇだろ。あのおっさん」

B「いや、めっちゃツイッターやってるぞ」

A「マジかよ」

B「俺、鍵アカでフォローしてる」

A「なんのために?」

B「家出るときに”出発ー”ってツイートすっから、それ見たら外回りに行く」

A「あー!お前それでいつもいねぇのか!?」

B「情報化社会万歳だ」


A「その情報化社会で”頭悪い女”ってどうやりゃ見つかるんだかなぁ。

  つかお前、さっきからスマホいじってばっかじゃねぇか」

B「ネタを探してんだよ。もうパクっちまおうぜ」

A「それっきゃねぇな」


二人はスマホをにらんでネタ探しを始めた。


B「あー、タピオカってまた流行ってんだな」

A「マジか。またやるか。タピオカ屋台」

B「もう他のとこがやってっからなぁ。”客盗るな”って怒られるだろ」

A「出遅れたか」


B「それにウチ、土建屋だぞ」

A「いいじゃねぇか。タピオカ売る土建屋がいても」

B「工事現場でタピる奴いねぇだろ」

A「足袋タビならよく使うけどな」

B「口に突っ込んでやろうか」


A「もう旅に出たいな」

B「お前、現実逃避するとダジャレが多くなるよな」

A「海外旅行とかさ。もう全部投げだして遊びてぇな」

B「海外っていえばウチ、外国人多いよな」

A「ビザあるのか怪しい連中だけどな」

B「少し前に他所がそれで引っ張られたよな」

A「ウチの連中、大丈夫かなぁ」

B「とっとと結婚してくれりゃ安心なんだけどな」


A「結婚ビザってやつか。偽装結婚やら名義貸しやら、昔やったな」

B「俺、それでバツ8」

A「俺は7だったかな」

B「おっし、勝ったー」

A「勝ちも負けもねぇだろ」

B「ま、そうだな」

A「価値もねぇ」

B「ほんとダジャレ多いな」


A「あ!」

B「どうした?」

A「これ良いじゃねぇか。パクっちまおう」

B「お?あー、なるほどね。これなら話題になるわ」

A「怒られても”パロディです”って言えるくらい話題だしな」

B「じゃ、ポスターにはウチの社員の……外人のやつがいいな。コイツどうだ?」

A「いいじゃねぇか、色黒マッチョな男前」

B「で、コイツの仕事姿をどーんと出して」

A「で、このキャッチコピーを乗っけて……っと」

B「よっしゃ。完成だ」


極道きわみち土木建設』

『事務・パートタイム募集中』

『ハーフの子供を産みたい方に』



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