第24話 ソーラス視点
突然のカーシャの言葉、それに私はただ呆然とすることしかできなかった。
エレノーラに不正が出来るはずないことを、私は理解している。
何せ、今まで私達はエレノーラに甘い汁を吸うことがないよう管理してきたのだから。
そんな状況で、エレノーラに不正が出来るわけないことはカーシャも理解しているはずだ。
が、カーシャは一切表情を変えることなく言葉を続ける。
「……これは侯爵家の不手際です。申し訳ありません。ですが、エレノーラ様を見つけることが出来た暁には、その罪を償わせることをお約束いたします」
「……っ!」
私が、カーシャの狙いを理解したのはその時だった。
簡単な話だ。
カーシャは、伯爵家の人間でもあるエレノーラに罪を着せることで、侯爵家の責任を減らそうとしているのだ。
それでも侯爵家の責任は問われはするだろうが、侯爵家の使用人達が罪を犯すよりもずっとましだ。
その上、この話の進め方であれば、辺境伯に対してエレノーラ捜索の協力を取り付けることも出来る。
エレノーラに公爵家との問題を解決した後には、辺境伯に引き渡さなければならないのは痛いが、このまま侯爵家の問題となるよりはずっとましだ。
……もちろん私だって、不正に関していずれかカーシャを問い詰めなければならないことは理解している。
だが今は、辺境伯との関係を修復することが一番だ。
そう判断した私は、カーシャに同調する。
「カーシャの言う通りです。改めて考えてみると、不正が出来る人間はエレノーラ以外ありえません! マルレイア辺境伯、いずれエレノーラに不正を償わせるためにも、ご協力頂けませんか?」
先程の失態を取り繕うため、私は出来る限り丁寧に辺境伯へと頭を下げる。
黙っていた辺境伯が重々しく口を開いたのは、次の瞬間のことだった。
「……そうか」
その言葉に、辺境伯を説得できたと思い込んだ私は歓喜を覚える。
……しかし笑みを浮かべ顔を上げた私は、それが勘違いであったことを悟る。
「……貴様らの話を聞こうとしたことが、そもそもの間違いだったのか」
──そう呟いた辺境伯の目には、激しい憎悪の炎が浮かんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます