りけじょ！のシュールな冒険【I】196883次元編

プロローグ

チキュウ

少女は村人の死に深く落ち込んでいた。そんな彼女を元気付けるため、彼は自分の眼に宿る不思議な能力を使った。

少女が今まで一度も見たことのない変化に富んだ景色。それが空いっぱいに浮かんでいた。

「あっ、見て！一面真っ黒な世界に、心が洗われるような綺麗な宝石があんなにたくさん……。こんな素敵な世界があるのね」

「どうだ？実はまだまだ見せ場はたくさんある」

「ホント？他にはどんなものを見せてくれるの？」

「ああ、これはどうだ？」

「どこ？木々に白く綺麗な花があんなにたくさん……。あ！急に景色が変わった！あれ知ってるわ！水よね？でもあの水、ゆったりとした音を響かせながらゆっくり動いている。あのお水、いったいどこまで続いているのかしら……。あれ？空には私のいるこの世界と一緒で雲があるのね。でも、私の知ってる雲と形が違うわ。ゆっくりとだけど動いてる。あ！今度は急に暗くなって……ねえ、なあにあの光？」

「あれか？あれは花火と言うらしい」

「花火？聞いたことないわ。でも、綺麗……」

「次はこれだ」

「今度はまた周りが明るくなったけど、木々に赤い花があんなに沢山……」

「そして、最近見つけたオススメがこれだ！」

「また周りが暗くなったわ！あ！最初に見せてくれた宝石に似てる……。お花や雪の結晶の形、あれはアーチ、あれは一本の高い木ね。どれもすごく綺麗。一度本当に見に行ってみたいわ。ねえ？今私たちが見ている風景ってどこにあるの？」

「詳しくは知らない。でも、あれは確か、チキュウっていう星らしい」

「チキュウ……本当に変化に富んだ素敵な星ね」

退屈しない素敵な毎日を過ごしていた二人にとっての幸せな関係。その素敵な関係は、残念なことに長くは続かなかった。それは、彼にも始まってしまっていたから。少女の身の回りに起こってきたあの現象が……。