第7浴 温泉施設、また救急車の世話になるってよ

 出勤すると、たまに出入り口に救急車が停まってることがあります。


「あー、また出たか……」


 また、冬が来てしまった。

 温泉施設で、寒くなると劇的に増えるもの。


 その名は「湯あたり」。


 目の前で、普通に歩いてた人がいきなりバタリと昏倒!

 全身、血の気がなくて真っ白。意識なし。

 運が悪いと転倒時に負傷、大出血!


 ホラー! パンデミック!


 そんな恐ろしい場面を、今までに何度も見ているのです。


 大半の方は、数秒から数分で意識を戻しますので、畳の上までなんとか移動してもらい、20~30分ほど横になってもらいます。経口補水液や氷などで手当てします。

 それでだいたい回復しますので、あとは着替えてお帰りいただくだけです。(再度の入浴はやめてもらいます)


 ですので、周囲の方々には必要以上に騒がないでいただきたいのですが……やっぱり、「早く! 救急車ーっ!」って大騒ぎになっちゃうんですよね。


 もちろん、様子を見て深刻な場合は救急車を呼びます。

 担架でお客様を運んだり、浴室まで救急隊員を誘導したり、お客様のロッカーから荷物を出してまとめたりなど、私も何度もやってます。


 また、ご本人やご家族が「念のため」と希望した場合も呼びます。

 でも、ほとんどの方は回復したら呼びたがりません。

 軽い湯あたりはそれこそしょっちゅう起きるので、そのたびに救急車を呼ぶわけにもいかないと思うのです。その時間に、よそでもっと深刻な事態が発生するかもしれないじゃないですか。


 原因は、ほとんどが単なる長湯です。

「長く入らないともったいない」と思っちゃうんでしょうね。

 温泉につかりながら寝る人。気持ちはわかるけど、とても危険だということを覚えておいてください。


 長く入りたいなら、こまめに浴槽から出て、こまめに水分補給しましょう。


 また、体調が悪いのにわざわざ来館される方がいます。

 湯治とうじという言葉のせいか、「温泉に入れば体調がよくなる」と思ってるのでしょうか?

 入浴は体に負担をかける行為です。湯治にもちゃんとした入り方があるはずです。


 意識をなくして周囲の人々を驚かせ、大勢に囲まれて介抱される……だけならまだしも、運が悪いと大けがしますし……あと、体内からいろんな物を放出しちゃうことも……ありますし……


 そこまでして、長湯したいでしょうか?


 ここをお読みの方は、もう長湯しませんね。

 体調を整えて、水分をしっかりとって。いつまでもダラダラ入らないことです。さっと着替えて、スマートに退館しましょう。


 それが、温泉利用上級者というものです☆

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