是 編

第一話

二十八



―2005年6月某日 夜―


―新宿二丁目 人気の無い公園―



黒い男「ちッ!」


夜中とはいえ人通りがある、小さな公園。


木が生い茂り、暗く、整備が為されていない、綺麗とは言えない公園。


その中を、骨女ほねおんなが怪しく笑いながら右へ左へと自分を翻弄する。


黒い男「…そもそも骨だから発声器官ねーだろ…!」


一人常識に苛つき誰ともなくツッコむ。


あれから二年― 一緒に戦った仲間はそれぞれの道を歩み、自分は独りで、未だ都内の魔を狩っていた―


独りでも、余り困らなかった。


人手が欲しくて、―仲間がいたら―とは考えた。


―それが正に今だった。


チョコマカ鬱陶しく動く、面倒だ。


しかも真言は苦手…面倒だからココ全部斬り割くか…


そうしよう!


黒い男「なら…!」


"閻魔"を顕現させ、力を込めようとした時―。


??「あーあー…オイオイ…そんな強力な技だと危険だろう」


後ろから声を掛けられ、気が削がれる。


それに若干の苛立ちを覚え、声のした方向を向く。


黒い男「…は?」


視ると、ラフな格好をした、恰幅かっぷくの良い男だった。


黒い男「…ダレだ? アンタ…」


??「失礼だなー? オマエ てえか、こういう時はこーするんだよ オン・バラ・ダ・バ・ザラ・ダン金剛尊よ 願を満たし賜え!」


文殊菩薩もんじゅぼさつ六字文殊ろくじもんじゅを唱え、印を組むと、滅罪の衝撃が骨女を襲う。


それと同時に結界を張っていたのか、人の気配が無くなる。


??「オイ! やれよ!」


黒い男「え?! あ…わかった! オン・エンマヤ・ソワカ!」


その隙に"閻魔"を顕現させ、十字に斬り割く。


怨嗟の叫びと共に、骨女が霧散する。


??「やったじゃねぇか」


黒い男「…あのー 誰?」


閻魔をしまいながら、警戒心全開で聞いた。


??「シッツレイなヤツだなお前 助けて貰っといて …なんで真言唱えねえんだ?」


失礼なのはソッチだろ


そう思いつつ答える。


黒い男「…苦手なんだよ」


??「おーそーか! んじゃ一緒に狩るか 教えてやんよ」


黒い男「はぁ…そうスか…」


??「暗ぇーヤツだなお前 ま、いいや、じゃヨロシクだぜ」



…これが、先輩白の男との出会いだった―



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