第9話

誰が見ても小久保を蔑んでいるとわかる態度と口調で言った。


「ははん、みんないなくなったてか」


「うん。何人かいたはずなんだけど、みんないなくなってしまって……」


俺は気付いた。


小久保はこの世になんだかの未練があって、ここに居残っているわけではないことに。


こいつはただ、自分が死んでいることにまるで気がついていないだけなのだ。


「ふーん」


千石も気付いたのだろう。


小久保が死んで二ヶ月経っても、キャンプ場にいる理由に。


声があからさまに、もう小久保には興味がなくなったと言っている。


「でも、たまに来る人もいるけど」と小久保。


「誰だ?」


「知らない人が多いけど。でも磯野君と小野田君が来たよ」


やはり磯野と小野田は小久保を見たのだ。


千石が言った。


先ほどよりは少しばかり関心が戻ったような口調で。

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