弾け飛ぶ果実

ドの音。

レの音。

ミの音。


耳に反響するのは

彼の声。

「愛してる」

その言葉が

虚言であるか本音であるかなど

私にはどうでも良くて

脳の中に残った声を

反芻し続ける。




ファの音。

ソの音。

ラの音。


街に響くのは

ぐちゃぐちゃに混ざった

生活音。

人間の煩悩は

108の鐘の音では

消えなかった。

いけない事とは分かっていながらも

してしまうのは人間だからだろう。



私の首を目指して

鉄のギロチンが落ちる。

この期に及んでも

「愛してる」の一言が

残響している。

愛に正直な私の何処が

悪かったのだろうか。





彼の音が消えた。

今は死の音が鳴り響いている。

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