第183鱗目:おでかけ!龍娘!
「ふわぁー……おはよー」
「あ、おはよう梨奈ちゃん。よく寝れた?」
「うんー……むにゅうー」
「わわっ!もー、勝手に抱きついたりしたらダメだよー?」
「はーい……んー、すべすべぷにぷにぃー」
「もー」
梨奈ちゃんったら可愛いなぁ〜♪
「んうぇへ〜♪」
朝、目を擦りながら可愛らしくぬいぐるみを抱っこして起きてきた梨奈ちゃんに笑顔で尻尾を頬ずりされながら、朝食を用意していた僕はふふっと笑みを浮かべる。
「うーっす……ふぁぁあ…………お、早速抱き着かれてるな」
「お、珍しく隆継が早起きした」
珍しい事もあったもんだ。今日は大雨でも降るのかな?
「隆継おにーちゃんねぼすけさんなのー?」
「そうだよー、隆継はお休みの日いつもお昼過ぎに起きるんだよーったぃたぁー!?」
「余計なことを言うな」
「だからって頭思いっきり叩く必要ないじゃんかー!全くもう」
「はっはっはっ、わりーわりー。んで千紗さんとサナは?」
「なんか買い物に行くって張り切ってたよ。僕も行きたかったんだけど、二人共僕は着いてきたらダメって言うし、それに梨奈ちゃんを放ってほけないしね」
そう言って僕がこちらをじーっと見てた梨奈ちゃんを撫でてあげると、まるで子猫のようににへーっと顔を綻ばさせてすりすりと頬ずりしてくる。
「なるほどなぁ……そうだ……せっかくだし、俺らも昼からどっか出かけないか?」
「お昼から?」
別に予定もないし、全然構わないけど……
「どうしていきなりって顔だな鈴香。まぁ何だ、アイツらが出かけてるなら俺らも出かけてやろうぜってだけだ。それにほら」
「鈴香おねーちゃんと……お出かけ……!」
うおぉ……梨奈ちゃんの笑顔が眩しい……!
「な?」
「ふふっ、そうだね。それじゃあ三人でお出かけ、いこっか」
「────っうん!わはぁー!お出かけお出かけ〜♪楽しみだな〜♪」
僕がそう梨奈ちゃんに笑顔で言ってあげると、梨奈ちゃんはぱぁっと満面の笑みを浮かべ、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら大喜びするのだった。
そしてそんな梨奈ちゃんを見て、僕と隆継は顔を見合わせ共に笑いあった。
ーーーーーーーーーー
「「おいし〜♪」」
「……こういうとこで視線を気にしなくていいのは、女子の特権だよなぁ」
「でも美味しいでしょ?クレープ」
「……まぁな」
「甘あま〜い♪おいし〜い♪くりーむいっぱ〜い♪」
「ふふっ。梨奈ちゃん、ほっぺにクリームついてるよ」
そう言うと僕はクレープに夢中の梨奈ちゃんのほっぺを指でツイっとし、クリームを取って口に運ぶ。
あの後、外行き用の服に着替えたりと準備を整えた僕達は、比喩ではなく本当にひとっ飛びで何度も学校帰りに寄っているレンガ広場へと来ていた。
「ふぅー、美味しかったー」
「満足した?」
「うん!」
「それはよかった。……隆継はそうでもなかったみたいだけど」
「そりゃあ……店内の何処を見ても女の人ばっか、んで男は俺1人だったからな」
「あはははは……」
これは……隆継に悪い事しちゃったなぁ…………何か出来ること……お、あれは。
「ねぇ二人共、次はあそこに寄らない?」
「「んー?」」
ーーーーーーーーーー
「あーらよっと」
「おぉー!隆継おにーちゃんすごーい!」
「だろ?」
「うん!」
シャーっと滑りのいい音を鳴らしながらこちらへと氷上を滑って近づいてくる隆継を見て、僕の抱え上げている梨奈ちゃんは興奮した様子でスケート靴を履いた足をバタバタと動かしていた。
そう、クレープを食べた後僕達は腹ごなしがてら市が運営しているスケート場に来ていたのだった。
まぁ僕は重量的にスケート靴履くの自重せざるを得ないんだけど。
「ほら、梨奈ちゃんもおいで」
「梨奈も滑れる?」
「もちろんだよ。俺が滑り方教えてあげるから」
「う、うん。いってくるね鈴香おねーちゃん」
「うん、行ってらっしゃい」
そう言って僕は不安そうな顔で隆継に手を引かれながら、ヒラヒラとこっちに手を振る梨奈ちゃんを見送るのだった。
流石隆継、スポーツは得意って豪語してるもんね。教えるのも上手だし、きっと梨奈ちゃんも直ぐに滑れるように……
「お、うまいうまい!その調子だよ!」
「う、うん。梨奈、滑れてる!」
羨ましいなぁ……
「少しだけなら……大丈夫…………だよ……ね?」
その後、スケートを堪能した僕達は「多めに」お金を払い、大人しく家へと帰ってちー姉達の帰りを待ったのだった。
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