第176鱗目:退院!龍娘!
バサッバサッバサッバサッ
やっぱり体を自由に動かせるのっていいなぁ~
「お日様もぽかぽかで風も気持ちいいし、今日は絶好の退院飛行日和だー」
そう言いながら宙返りしたりきりもみ回転しつつ、12月に入った所でようやく退院出来た僕は、ゆっくりと空を飛んで家へと帰っていた。
それにしてもせっかく半月くらいで退院できたっていうのに、隆継達も日医会の人もみーんな用事あるからって……何日かくらい退院日ずらせば良かったかなぁ。
「まぁ皆もそれぞれ忙しいだろうから?お迎え来れないって言われても仕方ないけどさー、やっぱりせっかくならおめでとうくらい言われたかったよ」
そんな風にぷくっと頬を膨らましながら誰も居ないんだしと珍しく愚痴を零しつつ僕が飛んでいると、いつの間にか眼下に見える景色はビルの建ち並ぶ街から木々の立派な山林地帯へと変わっていた。
「ありゃ、もうこんな所まで……やっぱり空を飛べるのって便利だなぁ。欠点という欠点も寒いのと飛びすぎると翼の付け根が痛いくらいだしねー、っと見えた見えた!」
いやー、たった数週間とはいえ久しぶりに見るとなんかこう帰ってきたーっ!って感じが……っとと、そろそろ高度落とさなきゃ。
翼を折り畳んで充分地面に近づいてー…………ここっ!
「んーっしょ……っと!無事着地完了!ようやく帰ってきたよ……我が家!」
バサリバサリと翼を羽ばたかせ僕の家の前に着地してからなんだか不思議な気分に浸りながらそう言い、人気の無い扉を僕が開けると────
パァン!パパァン!
「「「「「退院おめでとう!姫ちゃん!」」」」」
うをあっ!?にゃっ、にゃにっごっと!?
「「「「「おかえりなさい!鈴香ちゃん!」」」」」
沢山のクラッカーの音と共に、部屋から飛び出してきた皆に唐突に祝われた僕は────
「…………」
「えっと……」
「鈴?」
「お、おーい……すずやーん」
「み、三浦さん……姫ちゃん硬直しちったっスけど……」
「あー……えー……っと……」
「────っ!」
「うわわっ!姫ちゃん泣かないで!?」
「お、脅かしたのは謝るから鈴ちゃん!」
「実は鈴香のお祝いの準備してたんだ!だからな!?」
「隠してた事は謝るから!天霧さん、落ち着いて!ね!?」
「ほら!美味しい料理とかプレゼントとか!沢山あるぞ!」
「皆…………ごめんなさーい!」
「「「「「「「「「「なんで!?」」」」」」」」」」
驚きと、嬉しさと、愚痴を言ってたという罪悪感で泣き出してしまったのだった。
ーーーーーーーーーー
「みぃ~」
む、この久しぶりに聞く可愛らしい鳴き声は……
「どしたのこまー?」
「みぃ」
「抱っこ?仕方ないなぁ~。ほらおいでー」
「みゃうー」
部屋でごろんと寝転がっていた僕は起き上がってそう言うと、こちらへと勢いよく駆けて来るこまをタイミングよく持ち上げてあげる。
「なんだー?僕が居なくて寂しかったのかー?」
「みぃう」
く~~!!可愛いなぁこいつぅ~!
あの後、皆と一緒に外が真っ暗になるまでどんちゃん騒ぎで退院祝いを楽しんだ僕は、今は布団で横になりゆっくりと休息を取っていた。
なお、とらちゃん達はもう子供だけで帰るには危ない時間の為、三浦先生達もお酒を飲んだりしてた為、今日は皆家に泊まるということで、僕はなんだかワクワクしていた。
ちなみに今とらちゃん達はお風呂、三浦先生達は大人達だけでお話中である。
「はぁ~、今日は楽しかったなぁ。皆で一瞬に盛り上がって、お泊まりもして……まぁ、皆一緒に寝れないのは残念だけど」
「みゃあ」
「うるさかったって?ごめんよこまー、よーしよしよし」
ん~ふわもこふわもこ、やっぱりこまは最高の触り心地だー。
「っと、そういや退院祝いにフード付きのタオルケット貰ったっけ。ちょうど少し寒いし、せっかくだから被っとこーっと」
「みゃん!」
「ん?こまもタオルケット一緒に被るー?ほれほれ、暖かいだろー」
「みぃうー」
あ~お腹見せちゃって可愛いなぁ~……にしても、今日は楽しかったなぁ。
ゴロゴロと喉を鳴らすこまのお腹を撫でてやりながら、僕はそう思いつつさっきまでの事を思い出していた。
ほんとこんな姿になっちゃったりしたけど、優しい友達に賑やかな家族が居て、僕は本当に恵まれてるなぁ……
「みぃ?」
「ん?大丈夫だよ。心配してくれたの?」
「みぃー」
「ふふふっ、こまは優しいねー。うりうりー」
「おー、やってんなぁ」
「わっ!隆継!?びっくりした」
「ごめんすずやん、せっかく久しぶりのお泊まりやからお喋りしたくてなー。ウチがついでにってたかくんとりゅーくんも誘ったんよー」
なるほど。
「にしても、だいぶ可愛いことしてたな鈴香。動画投稿サイトにあげたら凄い再生数が稼げそうだ」
「頼むからそういうのは勘弁して」
ただでさえ普通にすごしてるだけでも目立ってるんだからこれ以上目立つのは避けたいんだよ!
「いや、案外いい考えかもしれんぞ」
「「「「「わぁぁ!?」」」」」
三浦先生いつの間に!?
いつの間にか後ろに居た三浦先生に驚き、思わず僕達は叫びながらガタガタっと音を立て、後ろに勢いよく下がったのだった。
そしてその時見えた三浦先生は────
ものすごく悪い顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます