140字蟹140『教師の噂』

「あの教師は蟹が無くならなかったことを気に病んでいるらしい」

「そりゃまた、どうして」

「蟹は多くの人を惑わす。それが無くならなかったのは、蟹ハンターを辞めてしまった自分のせいだと」

「勝手な思い込みだね。僕たちは人を惑わすけれど、だからってハントされるのはお門違いさ」

「人を惑わすとこは否定しないのか……」

「しないよ。怪異そのものだからね。危険じゃないか? できるだけ近づかない方がいい」

「そんな蟹に選ばれた俺たち人間のことも考えてくれよ」

「運が良かった、としか言いようがないね。そのままにしておくと死んでしまっていただろうから」

「恩着せがましい~!」

「事実なんだから仕方ないだろ?」

「はー……」

 そんな蟹のことを好いてしまっている俺も俺だが。

 蟹ハンター不足を嘆いた教師の噂。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る