140字蟹127 宇宙蟹

「こちら蟹~蟹~応答求ム」

「オーケイ、俺だ。こんな時間まで何してるんだ」

「宇宙を彷徨さまよってるんだよ! 困ってて」

「そりゃ困るだろうな! なんで宇宙なんかに」

「え? ロマンだから」

「その価値観だいぶ古くないか?」

「君は宇宙好きなヒト全員に謝りなさい」

「えっあっすまない……」

「ふんふん」

「で、帰ってくる気はあるのか」

「あるとも! ワープ!」

「あっ本当に帰ってきた、しかも俺の部屋に! 一瞬で帰れるならすぐ帰ってこいよ……」

「君と連絡がつかないと帰れないのさ」

「なんで……」

「対だからね」

「なんで勝手に宇宙に出たんだ」

「それはね」

 蟹の黒い目が光る。

「キミ ニ トモダチ ヲ ツクッテ アゲタカッタ カラ ダヨ」

「うわあああ!」


 飛び起きる。

 俺の隣には蟹がすやぁと寝ていて、宇宙のことを聞いてみても何それ、知らなぁいと返されるだけだった。

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