140字蟹104 死生観

 蟹が滑り落ちてくるという。

「蟹の魂が」

「蟹に魂なんてあるの?」

「あるのではないか」

「僕はないと思うけど」

「では蟹は死んだらどこに行くのだ」

「人間だって死んだらどうなるかわからないでしょ」

「天国に行くのだ」

「そう信じられるうちが華ってやつ」

「お主とは気が合わぬようだ」

「僕たちいつも気が合わないじゃん」

「まあ、そうではある」

「蟹は死なない、ただ消え失せるのみ、だよ」

「とお主は信じているわけだ」

「どっちみちどうなるかなんて誰にもわかんないんだよ、アイスでも食べよ」

「今日はソーダ味だ」

「やったー!」

 アイスの好みだけは合うのだから不思議なものだ。

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