ハートフル蟹氏エピソード5 ディナーのお誘い

「金曜の夜ですよ」

「だから何?」

「どうですかひとつディナーでも」

「何いきなり」

「おいしい店を見つけたんです、君にも食べてもらいたくて」

「はー…悪いけど今日は眠いから帰る、夜更かしできないタイプなんだよね」

「では明日の夜」

「マジで言ってる?」

「マジです」

「わかった」



 土曜日の夜。

「意外とおいしかった」

「意外とですか?」

「…おいしかった」

「ふふ」

 蟹と私はレストランからの帰路についていた。律儀に家の前まで送ると言う蟹はてけてけと車道側を歩いている。

「星が見えてますね」

「新月手前だから」

「星、好きですか?」

「まあまあかな」

「僕は好きです」

「ふうん?」

「水の中から見る星と地上で見る星は違いますからね、そこが面白くて」

「…」

「今日は星が綺麗です」

「…そうだね」

 歩く。虫の声。家に着くまで、蟹と私はぽつりぽつりと話をしていた。

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