140字蟹37 8月15日

「礼を忘れるな」

 なぜ?

「死ぬまで×え」

 ×いたくない。

「歯を食い縛れ」

 歯が痛い。

 平穏に暮らしたかったのにどうして。

「腑抜けが」

 いつの間にか世界が、

「供出せよ」

 押し入れの中で頭を抱える。助けは来ない。

 だって皆××のために。高揚して。

 乱暴に叩く音の後、ドアがどかりと破られた。



「蟹ー」

「何ー?」

「変な夢見た」

「どんな?」

「供出せよって」

「何を?」

「何だろ、鍋とか猫とか?」

「何それ」

「わかんない、謎シチュ」

「蟹は?」

「いなかった…嫌だね家に怖い人が来るのは」

「大丈夫だよ、ここには誰も来ない」

「…そっか」

「アイス食べる?」

 青空。蝉が鳴いていた。

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