140字蟹10 小学一年生の頃にはもう

 小学一年生か。その頃にはもう蟹と暮らしていたな。

 蟹といたから人の学校ではなく蟹の学校に通った。友達もいっぱいできたけど、長じるにつれ皆人間を「選んで」いなくなっていった。

 寂しがる僕に僕の蟹は自分がいるからいいじゃないかと言ったけど、パートナーと友達は別なんだよ。

 今日も僕と蟹はアパートの一室で飲みながら昔の思い出話なんかをしている。けれどやはりあの頃は懐かしい。誰も誰かを選んでなんかいなかった、皆に蟹としての可能性が開けていたあの頃。

 そんな風に思うのは、僕が人間だからだろうか。そう蟹に尋ねると、ううむと唸って天井を見上げた。

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