ハートフル蟹氏エピソード1~3

 人生が退屈、そんな言葉見たくはなかった。こっちはそんな暇もない。退屈かよかったね一生やってろ。そう思いながらぱちぱちやっていると蟹が出て来て休憩しませんかと言った。一緒に缶コーヒーを飲んでいたらあれ書いたの僕なんですと言われて私ははああとよくわからぬ息を吐いた。



 蟹とあちこち遊びに行っても海に出掛けたことはない。そのまま還ってしまうかもと思ったからだ。なのにその日の出張は海の見える町で、よせばいいのに私は蟹と砂浜を歩いて、だけど振り返っても蟹はまだ還らない。ねえと声をかけたら、僕の故郷は川なので。微笑む蟹に私はそう、と返した。



 蟹の故郷は遠い。いつか一緒に行きましょうねと言う蟹を机の下に置き私は今日も仕事中。がんばれーがんばれーとハサミを振る蟹。ちょっと黙っててと言ってメールを一本書き終えて、構ってほしかったの? と聞くといやまあそういうわけでも? 私は蟹を抱き上げてコンビニでカニかまを買った。

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