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 ルシウスはキャロルが手にしていた本を受け取るとパラパラとページを捲る。


 捲る度に腹筋が小刻みに震えているがそんなに面白い話だろうか。


「…そんなに面白いですか、それ。」


「えっ?

 あぁいや。

 この話からキャロルが勉強するには難易度が高過ぎないかと思ったら笑えて来てね。」


「失礼な。

 私だって勉強出来ますよ。」


「いやそうじゃなくてさ。

 キャロルは初歩の初歩で毛躓いてるレベルだからね。

 逆ハーレムを作れるような高難易度の恋愛は厳しいでしょう?」


「まあそれはその通りですが。」


「それで?

 何か恋愛力上昇は出来たかい?」


 ルシウスに微笑まれながら問われるがキャロルは首を横に振った。


「…正直さっぱり分かりませんでしたね。」


「どんな所が?」


 キャロルは本をパラパラと捲りながら目的のページを指差した。


「例えばここですね。

『キャサリンはアルフォンスと手が触れ合ってしまい思わずばっと手を引いた。アルフォンスも触れてしまった手を引っ込め頬を赤く染めている。2人の間に無言の時が流れた。』

 なんで手の皮膚の接触如きで赤面するのか分かりませんね。

 頬をぶん殴って赤くなるなら接触して赤面するのも分かりますが。」


「多分赤くなるの意味が違うんじゃないかな?」


「後はこの口付けですっけ?

 口同士を付けて何がしたいのかさっぱりです。

 人間の穴と言う穴は急所なんですよ。

 そこを差し出して何がしたいのやら。

 舌を噛みちぎられたらどうするんですかね。」


「あーなるほど。

 キャロルってあれだ。

 俺の後ろに立つんじゃねえタイプなんだ。

 背中を見せたら殺られるタイプだ。」


「私自身正面から堂々と殺るタイプですからね。

 背中を狙うような真似は卑怯です。

 美しくありません。」


「あれ?

 私達今恋愛について語ってたよね?

 何で殺人の美学の話になってるのかな?」


「なんでですかね?」


 2人は揃って首を傾げる。


 話が思わぬ方向に逸れていた。

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