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『呪われた子供が2人…片方は王の器とは珍しい客人だ。』


 頭の奥まで届くような重低音が聞こえる。


 視界がボヤけているがその声はやけにはっきりと耳に届いた。


 顔を上げボヤけた視界のまま前を見据える。


 頭を振って目のかすみを振り払うと神殿の中からこちらを見詰める巨大な蛇の様な紅い瞳があった。


 青白磁色の体はとぐろを巻きながら興味深そうにこちらに頭を向けている。


 龍だ。


 しかも龍は色が薄い程神に近い高位な存在だと言われている。


 このほぼ白に近い青の体の龍はかなり上位である事が伺えた。


「…まじでいた。」


 レオンが興奮を隠しきれない声で呟く。


 キャロルは体調の悪さでそれどころではなかったが。


『…ここは聖域。

 呪われし者にとっては毒にしかなるまいて。

 無理せず座るが良い。』


 龍の言葉にルシウスが崩れ落ちる。


 喘息の発作の様な呼吸をし滝のような脂汗を流していた。


 とっくに限界だったのだろう。


 龍はキャロルに瞳を向ける。


 しばし顔をじっと見た後深い息を吐いた。


『…実母に呪われたか。

 過ぎた物を望み呪うとは人間とは愚かな者よ。』


「…だから…来たんです……。」


 キャロルは荒い息を堪え言葉を振り絞る。


 キャロルの言葉にレオンは目を丸くしているが構って等いられない。


 龍は少しだけ優しさとも憐れみとも言えない色を瞳に滲ませた。


『…お前にかけられている物は複雑に絡み合い最早呪術の類いを超えておる。

 術でない以上、儂にも解いてやる事は出来ぬ。

 己で気がついておろう。

 既にその呪はそなたの肩を掴む所まで来ておると。』


 キャロルは俯いて唇を噛み締める。


 現実を突き付けられ諦めと絶望が襲う。


 やはり無理だった。


 分かっていたが心の何処かで期待していたのだろう。


 でなければこんな所まで来たりしない。


 膨大な魔力を持ち奇跡の術を扱える等と眉唾物の噂にすがっているかどうかも分からない龍を探したりなどしない。


 龍は今度はルシウスに目を向けた。


 同じ様にルシウスを暫く眺めている。


 龍は過去を見れると文献で見たが事実なのかもしれない。

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