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「彼女占いに自信ありそうでしたけど自分の未来は見えないんでしょうかね?」


「さあね。

 さっきの私への占いも私が王太子だと知っていたなら妥当な予想だよ。

 王となるか、身を引くか、愚王となりクーデターを起こされて処刑される前に自害するか。

 未来を見なくても分かる話だね。」


 言われてみれば確かに未来が見えなくても分かる事かとは思う。


 夢もへったくれも無いが。


 だが現実なんて結局そんな物なのかもしれない。


「つまんねーなー。

 もうちょっと夢を見ようぜ殿下。」


「夢だけじゃ誰の腹も満たせないよ。

 夢を追うにも現実を理解しとかなきゃそれはただの愚者だと思うからね。」


 レオンの文句に対してもルシウスの言葉はシビアである。


 指導者としては正解かもしれないが王子としてはどうなんだろうか。


 お伽噺ではいつだって夢の様な存在である王子がこんなにシビアで良いのか。


「…もし階段にガラスの靴が片方落ちていたらどうします?」


「ん?

 落し物なら城の保管庫で3ヶ月保管して持ち主が現れなかったら処分するかな。」


「いやあのその持ち主が非常に美人だとして。」


「保管庫の管理は衛兵に任せてるから持ち主の美醜は私には全く関係ない話だよ?」


 本気で何を言っているのかという顔をされてしまう。


 シビアだ。


 夢の欠片等微塵たりともない。


 こいつはお伽噺の王子役は務まらないだろう。


 キャロルの疑問の意味が分かったのかレオンも口を挟む。



「じゃっじゃあ隣国で超美人が仮死状態で王子様のキスがないと目が覚めないから助けてって言われたら?」


「まず王子なんて役職の人間は隣国にだっているんだから私でなく隣国で解決すべき話だろう?

 うちに言われても管轄外だよね。

 そういう嘆願書はその土地を管理している然るべき場所に提出して貰わなきゃね。」


 ダメだ。


 こいつがヒーローではシンデレラも白雪姫も報われない。


 お役所対応とは正にこの事だ。


 いや現実的にはそれが正しい対応なのだが。


「…殿下は良い王になりますよきっと。」


 黙って料理を食べ続けていたリアムがレオンとキャロルに流れる空気を読んでルシウスをフォローする。


「ん?

 ありがとうリアム。」


 まあ統治者なんて実際こんなもんであろう。


 お伽噺のヒーロー達が色々ぶっ飛んでいるだけなのだ。


 キャロルは現実なんてこんな物という言葉を噛み締めながら塩辛い肉を頬張った。

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