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「というかダサいって何だ。

 普通にセンスあるだろ。

 女性なら言われてみたいとかあるだろ。」


「いやないです。」


「クリス殿。

 俺も女じゃないけどないと思うぞ。」


 クリスがやさぐれ気味に白ワインを口に含む。


「それはお前達がお子様だからだ。

 古来より口説き文句としては最上級だと決まってんだから。」


「キャロルの兄ちゃんってこんな事言ってるからモテないんだな。」


「そうなんですよね。

 見た目も地位もいい物件だと思うんですがセンスが少々。」


「物件ってなんだ物件って。

 んな事言ってるけどお前らだって同じ穴の狢だからな?

 キャロルは引きこもりだしレオン様は良いお友達止まりタイプって噂だし。」


「えっどこの噂だよ?!」


「王宮じゃ周知の事実です。

 そこら辺に居るメイド達でさえ全員知ってます。」


 レオンはがっくりと項垂れる。


 知らない間にモテない人間判定を食らっていた事はレオンに深い心の傷を負わせた。


「べっ別に俺は最悪政略結婚するし?!

 次期宰相だから地位的には絶対モテるし!?」


「レオン、自分で言ってて悲しくなりません?」


「言ってやるなキャロル。

 追い討ちをかけないのもまた優しさだ。」


 3人はモテない人間同士傷付け合いながら酒を飲み交わしていく。


 誰も救われない悲しい会であった。





 月明かりの差し込む窓辺でキャロルは1人麦酒を煽る。


 膝の上にいた毛玉はキャロルが相手をしないからか既に我が物顔でルシウスの枕を占拠していた。


 夜会からこっそり持ち帰った料理を摘みながら1人呑みである。


 ドレスは既に脱ぎ捨ていつもの寝間着だ。


 何だかんだ言いつつコルセットのせいでろくに胃に入らなかったのだ。


 コルセット文化などなくなれば良いのに。


 キャロルが1人心の中でコルセットへの罵倒をしていると部屋の扉が開いた。


「…あぁ、お疲れ様です。」


「人の足を思いっ切り踏み逃げしておいてのんびり一人酒とはキャロルもなかなかやるね?」


 あぁそう言えばそんな事もあったか。


 すっかり忘れていた上にこいつが女々しい事も忘れていた。


「…まぁワイン1瓶で今夜は許してあげるよ。」


「それは珍しい事もあるようで。」


「許されたくないのかい?」


「いえいえ滅相もないです。」


 キャロルは事務机の横からワインを取り出しルシウスに渡す。


 ルシウスは自分でグラスに注ぎながらキャロルの持って帰って来た料理を摘む。

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