30
太陽が傾き森が茜色に染まると突然拓けた場所に出た。
4人で囲んでも手が届かない位太く高く生えた大木が湖とも池とも言えない水源の周りに茂っている。
水は透き通り今は木々の緑と太陽の紅色を映し息を飲むようなコントラストを描いていた。
そして水源に続く足首までの草原には真紅や藍色の花が咲き乱れている
「…良かった、やっぱりあった。」
ルシウスがホッとしたように呟く。
「ノア、今日はここに野営しますか?」
「そうだね、ここなら大丈夫だろうから。」
それを合図に馬から降りる。
降りた途端股関節が悲鳴を上げ崩れ落ちた。
やはり初心者が丸一日乗馬と言うのは無理があったらしい。
「キャロさん、大丈夫か?」
馬から転げ落ちたキャロルを見て慌てた様にリアムがやって来て野営地の椅子替わりの倒木に運ばれる。
足ががくがくしているが仕方あるまい。
立ち上がる事も出来ず3人がテントを貼ったり焚き火の準備をするのを眺める。
「キャロ大丈夫かい?」
粗方準備を終わらせ鍋で湯を沸かしながらルシウスに聞かれる。
何で自分だけこんなに動けないんだろう。
何となく悔しくて足元に咲いている花をむしろうとしたその手をルシウスに止められてしまう。
「キャロ、ここの花はダメだよ。」
「…何でですか?」
夜になったら教えてあげるから我慢してとルシウスは微笑む。
むくれるキャロルにルシウスは困ったように笑いながら紅茶にレモンの蜂蜜漬けを浮かべたマグカップを渡した。
こくりと1口飲むと優しい甘さと温かさが体に染みていく。
「美味しい?」
「…はい。」
キャロルがまだむくれているのに気がついたルシウスは苦笑いしながら呟く。
「ポピー。」
「…は?」
「マルベリー。
フェアギスマインニヒト。
これがこの場所に咲いてる花達の名前だよ。」
ヒントはここまで、とルシウスは片目をつぶる。
「…全然分かんないです。」
「花言葉なんかは詳しくないの?」
「植物の効能には興味がありますが花言葉は興味を引かれませんね。」
「なら夜に教えてあげるよ。」
そう言ってルシウスに頭を撫でられる。
苛立ち混じりに飲んだ紅茶はやっぱりムカつく位甘酸っぱくて優しい味がした。
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