16

「つかワインスト嬢こそ戦えるのか?

 どっかで訓練とか受けてんの?」


「一応魔術師の端くれなんでそこそこ戦えるはずです。

 まぁ今回は手っ取り早くこれを使おうと思ってたんですが。」


 キャロルは鞄から魔法陣の書かれた弾丸を取り出す。


「ん?

 なんだいこれは。」


「大火炎の魔法陣を彫り込んだ弾丸です。

 これを西の森の上空に打ち上げて詠唱を唱えて森を燃やして後から適当に死骸から魔石を貰おうかと。」


 ヒクッとルシウスの笑みが引き攣る。


 まさか森林を火の海にする予定だったとは思わなかったのだろう。


 ラブアンドピースを知らない少女には森林を守ろうなんて精神があるわけがないのだ。


 リアムもそれを聞いて遠い目をしているしレオンは大爆笑しだしてしまった。


「…うん確かに手っ取り早いけどあの森の奥にはエルフが住んでるからね。

 流石にエルフと戦争になるのは不味いし止めておこうね?」


「戦争になる前に燃やし尽くしてしまえば。」


「うーんランク上げの為に大量虐殺は立場的にも不味いかな?」


「…王族ってめんどくさいんですね。」


 王族というか人間としてやってはいけないだけである。


 キャロルが溜息を着くとルシウスが困ったように笑う。


「…ワインスト嬢はエルフに会った事あるかい?」


「いえ、ありませんが。」


「そっか。

 もしかしたら会えるかもしれないよ?」


「別に会いたいとは思いませんが。」


 …いや肉など全く食べず人間の何倍も長生きすると言われているエルフだ。


 1度解剖してみるのもありかもしれない。


 是非ともその構造を見てみたい。


 キャロルの考えが分かったのかルシウスはまたキャロルの頭を撫でた。


「…エルフに会ったらきっと考えも変わるよ。」


「なんでですか?

 というか思ってたんですが頭触るのやめて下さい。」


「エルフはね、君の敵じゃないからだよ。

 会えばきっと分かる。」


 キャロルの言葉を無視してルシウスは続けた。


 こいつはちょいちょい都合の悪い話になると耳が聞こえなくなるらしい。


 都合の良い耳である。


「殿下は会った事あるんですか?

 てかやめて下さいってば。」


「あるよ。

 同じ場所に住んでいたらだけど連れて行ってあげるね。」


「ありがとうございます。

 つかこの手もぐぞ。」


 そう言って脅すと漸く手が離れた。


 やれやれと思いながらまたキャロルは羊皮紙に目を落とすのであった。


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