3
何時間たっただろう。
出会ったのは夕方だったはずなのに今はもう既に深夜の3時を超えている。
見合いの場であったはずの謁見の間にはペンを走らせる音と本のページを捲る音、そしていつの間にかソファーで横になっているレオンの寝息のみが響いていた。
開発に追われていると豪語したキャロルは勿論だがルシウス自身この7日間で溜まった執務を捌ききるのに必死であったのだ。
そんな修羅場の様な空気が漂う部屋の扉を叩かれルシウスは顔を上げる。
「誰だ?
入ってくれ。」
扉を開けて入ってきたのはレオンと同じく側近であり第一騎士団副隊長のリアムであった。
「殿下、もう深夜です。
今日は切り上げて下さい。」
言われて時計を見れば確かに遅すぎる時間であった。
ルシウスは苦笑いを浮かべ返す。
「リアムありがとう。
でもあと北部であった土砂崩れに関する報告書を見れていないんだ。
これをやったら仮眠を取るよ。」
リアムは仕方ないという様に渋々だとあからさまに顔に出しながら頷いた。
ありがとうと笑みを返すと視界にふとあの暴風雨令嬢キャロルの姿が入った。
キャロルはリアムの事など目に入っていないのか、はたまた気が付いてさえいないのか夕方と同じく血走った目で羊皮紙にペンを走らせ続けている。
(…そう言えばこの子一体何を開発してるんだろう?)
脇目も振らず一心不乱に羊皮紙に向かっている少女に多少興味が沸いたのだ。
テーブルに乱雑に積まれた羊皮紙を手に取り中身に目をやる。
最初は興味半分、だが次第にルシウスは眉間に皺を寄せながら羊皮紙に目を走らせる。
「…ねえワインスト嬢。」
ルシウスが声をかけると苛立ちを隠そうともしないキャロルが顔を上げた。
「なんでしょう?
あと少しなので邪魔しないで頂きたいのですが。」
キャロルの道端の犬の糞を見るような目にも負けずルシウスは言葉を続けた。
「この羊皮紙に書いてある事について説明を聞かせてもらえないかな?」
ルシウスが手に持っている羊皮紙をチラリと見るとキャロルは眉間に皺を寄せた。
「説明も何も…適当に思い付いて書いてみましたが魔道具を使わない為楽しくないので没にした考えなだけですが。」
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