第2章 特報第2弾


「ここが……京都……」


初めて、私はその地にやってきた。


本当に人間が多く、そして伸び伸びと暮らしている街だった。その分、そこはとても危うい街だ。


いくら御門家領の領内とはいえ、絶対に安全な区域などこの世のどこにもありはしない。


反逆軍、人間を守る組織がこの街に拠点を置いているのは、外からの脅威から人間を守るために他ならない。


この京都という土地は人間にとっての楽園であり、それと同時に、常に人間を守るための戦場になっていると言ってもいい。データで見るだけでも、この京都には他の人間差別主義の家からの襲撃を、年100以上は受けている。


しかし、次に来る波はおそらくこれまでの比ではない。


この地に、12家が集まる。


全てが互いに異なる理想を持っているからこそ相容れない、倭を12分して支配する至高の組織12家。


それらが、天下統一のための大戦争の前哨戦をするために、この地に足を踏み入れるというのだ。それも、家臣を遣わせるのではなく、本家の人間を筆頭とする精鋭部隊を派遣するという予想が出ている。


この地は間違いなく、戦いの炎に包まれることになるだろう。


しかし、それは、はっきり言えばどうでもいいことだ。


私の狙いはそっちじゃない。その12家への攻撃と、京都占領に動き始める。


〈影〉。


今こそ光のもとに晒し、その暗黒を消滅させる時だ。


そして、胸に秘めた「復讐」を遂げる時だ。


明人先輩。奨先輩。


「見ていてください……」


ここまで来た。もう引き返す道はとうに崩れた。


私が戦うべき運命は、もうすぐ、やってくる。



***********************


明奈の前に『腕輪』をつけた巨漢が一人。


「よく来た。どこで死ぬ?」


明奈は不敵な笑みを浮かべて、問いに答える。


「建物の中は他を巻き込む。外に出ろ。人気の少ないところで、ゆっくり殺し合うのがいい」


「殊勝な心掛けだ。乗った。覚悟しておけよ? 臓物を吐いて泣きわめいても、俺は止まらないからな?」


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天江昇と歩季里は、伏見稲荷で信じられないものをみた。


「これは……!」


「嘘だろ、なあ!」


倒れているのは、天城来人。


あの、武闘派集団、天城家の次男であり、天城家で指折りの実力者。


本来であれば負けるはずがない彼が、ひどい傷を負い倒れていた。


「おい、起きろ! 起きろよなあ! 俺だ。来たぞ。約束通り、ちゃんと来たんだ! 起きろよ!」


昇の声に、返ってくる言葉はない。


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「東堂くん」


御門家の幹部から告げられる衝撃の事実。


「反逆軍に明日はないわ。逃げるなら今のうちよ」


「どういうことだ」


「あなたの生死は、反逆軍と運命を共にするか否か。神託で、そう出たのよ」


東堂はその場で黙ってしまう。


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「夢原希子。君は、我らと共に来るにふさわしい」


目の前には、『腕輪』をつけた男が立っている。


「大切な部下を、永遠の眠りから覚ませるのは僕らだけだ。どうか、これを腕に着け、僕らと共に戦ってはくれないか?」


「……断ったらどーなるわけ?」


「力づくで。に変わるだけだ」


「いいね。その方が、あと腐れない」


「人間であるままでは到達できない領域がある」


男は両手に剣を一本ずつ持ち、そして空中に刃を躍らせた。


「申し訳ないが。人間相手に2年前に負けた経験があってね。手を抜かないと誓っている。君には万に一つの勝機も与えない」


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「あいつ……!」


「如月、突っ込むなよ。機を待て!」


「ああ。一度踏み込めば、戻ってこれない。殺すか殺されるかだ」


反逆軍の迎撃部隊の一員に選ばれた、林太郎と如月、レオンは、軍の仲間たちと共に決死の戦いに挑む。


数々の兵が、後れを取るその相手は、人間差別主義を唱える本家の戦士。その1人を相手に、数十人で囲み、圧倒的な火力を持つ敵の攻撃を凌ぎ反撃の機会をうかがう。


「……面白い。人間もさすがに数がそろえば、蜂のように厄介なものだな。こちらもやる気になってくるというものだ」


その腕は、赤雷の籠手に覆われている。


「俺の『赤食雷あくいづち』は、撃ち合いには自信がある。さあ、激しくやり合おうじゃないか!」


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高層ビルの屋上から1階下。


「貴様が影の首領か?」


「いいえ。おじ様はここにはいないわ」


「ほう。だが幹部ではあるだろう」


12家の伊東家最強の男、伊東家次期当主である本家長男が、『腕輪』をつけた女性を睨む。


彼女の名前は早達春。2年前、源家を破滅させた元凶だった。


「慈悲をくれてやる。人間如きが〈人〉である俺達に至ろうなどという愚行。俺自ら裁いてやろう」


「ああ。私を殺すの?」


彼女の周りに暗黒の魔力が帯び始める。


「いい機会だから、12家本家の力を、測りましょうか」


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蒼く輝き、あらゆる不浄を清める炎を宿す刀。


そしてその後ろで、彼女を支える紅の炎の術者。


「私は逃げない。こんな私を受け入れてくれた人達を守りたい」


「ああ。行こう。私は君の意志を貫くための剣だ」


彼らもまた、魑魅魍魎ちみもうりょううごめく、燃え始めた京都の街へと歩き出す。


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「これは……楽しくなりそうじゃないか」


暗黒に包まれた郊外のある地。


そこで倭の強者は集っていた。


「ここでやるかい? 天城正人?」


「……は? やるのかよ。まあ、俺は構わないがな? だが、お前らが死ぬだけかもしれねえぞ?」


「いい挑発だ。乗った。殺すわ」


戦いは始まろうとしたその時。


上空から1人、男が舞い降りた。


「一夜に俺の庭を荒らす不届き者がこんなにも現れるとはな?」


「なんだぁ……?」


「うお、アレは……!」


天城正人は最大の警戒をするのに対し、もう1人は首をかしげるのみ。


無理もない。今この男は、それほど有名な男ではない。


しかし、その真の名を聞けば震え上がらないモノはいない。


倭の中でも、もしもこの男が暴れ始めたら、天城家が御門家にプライドを捨ててでも協力を、申し出るだろう、元『八十葉家次期当主』。


「光栄に思え。この俺が手ずから貴様らを消しに来てやったぞ」


八十葉宗一。


***********************


「ふぁふぉふぉ」


醜悪な笑みを浮かべて、地獄と化した京都を見下ろす老人。


そして彼を見た瞬間、神降かみおろしを完了させて戦闘態勢に入った御門が凄まじい殺気を向ける。


「みよ、この光景を。これこそ、儂の悲願の成就を祝う炎の祝宴よなぁ!」


「8年前からの因縁、ここで決着をつけよう。もう死ね、お前は見るに堪えん」


「儂を殺すか! できるかな。小僧」


老人と御門は、あいさつ代わりに凄まじい呪いを激突させた


***********************





運命は訪れる。


いつかこの日が来るとは思っていた。


「明奈……!」


「明奈、来てしまったの」


聡と華恋を見て、再会を懐かしむ余裕は湧いてこない。


「〈影〉に堕ちてしまったお前たちは救えない。救いもない。――殺すか殺されるかだけだ」


明奈の目に光はない。


「私たちには、共に生きる道などなかった」

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