第17話 誤解なんです
「腹減ったな」
僕はインターネットを中断し、遅めの昼食を買いにいくことにした。
財布を手にし、玄関向かう。
押し入れのお気に入りの場所でお昼寝していた茶々丸が這い出てきて、ドサリという重々しい音をたてて床に飛び降りる。
「何処行くにゃあ~。行かんといてにゃ~」とでも言いたげに僕の後を付いてくるので、「メシ買ってくるだけだからすぐ戻るよ」と彼女の頭を撫でる。
理解したかどうかは分からないが、ちょこんとその場でお利巧にお座りをしてお見送りをしてくれた。
階段を降り、2階に差し掛かる。
ちなみに2階にはテナントが入れるようになっている。
僕がこの賃貸マンションに引っ越してきたのは約3年前。
部屋を下見しに来たときに案内してくれた不動産屋のにーちゃん共々初めて知ったのだが、このマンション全体がリノベーションしたてのホヤホヤであり、僕が住人第一号だったのだ。
故にこの時には2階のテナントには何も入ってなくて空き家だったのだが、半年ほどしてある事務所が入った。
それはなんと、デリヘルの事務所兼待合所であった。
……看板も掲げてないのにどのタイミングでデリヘル事務所と確信したかは忘れてしまったけど。
ある日、香水臭いおねーちゃんと階段ですれ違いざまに「おつかれさまです」と言われたときに、「運転手じゃねーしw」と心の中でひとりツッコミしたことを覚えてる。
そして後から、僕ってデリヘルのにーちゃんみたいな容姿というか雰囲気出してるのかな……とヘコんだものだ。
一応、一部上場企業の中堅社員なんだけどな。
そのデリヘル事務所、営業時間は昼過ぎあたりから深夜までらしく、僕が出勤する9:00あたりは入り口のすりガラス扉越しには灯りがついていない。
その灯りが、今朝出勤するときには点いていたことを思い出した。
きっと、勤務中に発症したから灯りを切ってないのだろう。
もしかしたら中に人がいるかもしれないが、とりあえず今はスルーすることにした。
元々、あんまり関わりになりたくないからな。
そして1階の玄関を抜けて左折し、ちょっと歩いたところのコンビニに向かった。
コンビニの中の照明はいつものとおり、昼間でもそうとわかるくらいに明るく光っていた。
しかし案の定、誰もいない。
とりあえずさっさと食べれるサンドイッチとかおにぎりが欲しかったのだが、ふと手にとって見てみると消費期限切ればかりだった。
……なる程、こんなところにも社会崩壊の跡があるというワケか。
これは足が速い食品は既にもう駄目で、冷蔵保管が必要な食品は近々、冷凍食品は電気供給の死と共に食べれなくなるというワケだな。
僕はとりあえず、冷蔵保管が必要な食品やドリンクを持っていくことにする。
ついでに茶々丸のエサも。
沢山買い込もうと思ったが、別に取り合いしなければならない相手がいるワケでもなさそうだし、また来ればいいやと二食分程度を籠に放り込み、レジへと向かった。
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