ふるふるむーん

 ゆらり ゆらり

 揺れては おびえてる

 蝋燭のような あたしの心

 きらり きらり

 今夜の月は 綺麗だね

 小さな窓から 見える月は 丸いから

 あなたに ひっそり より添ってみる


「綺麗か、」


 ふわり すらり  あなたの 声だけに 耳を傾ける


「うん」


 ぱちん  電気を消して  ほら 光る 淡い 淡い 淡い


「綺麗か、」


 その 少し 低い声は  あたしの耳朶と あたしの心を 撃つ


「うん」


 ゆるやかな沈黙  ゆらゆら  たなびく 細い煙は


「月よりも」


 瞳に染みるの


「お前の方が」


 心に染みるの


「綺麗だ」


 きらり  ゆらり  ぼんやり  ふわり

 バター色のお顔のお月さまが あたしたちを そっと視ていた

 そういえば こういう人だったと 戸惑うあたしを

 優しい でも強い 腕がさらいにきた

 艶やかな形をした 唇が からめられた

 その紅い髪 その黒い瞳  あなたを構成するぜんぶが

 あたしを陥落させて、しまって 月が視えないよ

 視えるのは 月より 輝く その瞳 月よりもあなたの方が……

 お月さまが 落ちてくることは ないけれど

 あたしが 墜ちてしまうことは あるのです

 きらり  ゆらり  きらり  ゆらり

 堕ちていくのは あたしだけ

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