供述

どうやって殺したか?




わからない、気がついたら

通報するべきだったのはわかる…………

今ならわかる…………

※顔面蒼白で絞り出すようにそう答えた


ただ覚えていることは、刺した時の感触と顔


感触はなんというのだろうか多分もう二度と体験出来ないことだけはわかる

そして二度と忘れない

あの感触は一生残り続けるそれだけはわかる

※だんだんと顔は赤みを帯びていき早口になりながら語るその口調は自分に酔っている狂言者のようであった


あれを説明されて理解出来る人は刺したことがある人だけ

だからこそあなたには理解できない

それともあなたはこちら側の人ですか?

※こちらをみてニッコリと微笑んだ

その顔は驚くほど無垢な笑顔で人とはこうも純粋に笑えるのかそんな笑顔だった



× × × は恐怖した

この容疑者に対して今まで感じたことのなかった恐怖を感じてしまった

本気で言っているみたいだった、本気でこちらに問いかけその答えを知りたそうにしている


狂っている


それが最初の嘘偽りない思いであった












自分にとっての最後の思い出

最後の記憶

※返事を待たずして語りだす

尻すぼみにしかしハッキリと言った





もう聞きたくない

今日は止めておいた方がいいのではないか

× × × は純粋にそう思っていた

いや、純粋故にそう思ったのかもしれない

しかし× × × は真面目だった

職務をこなす程度には真面目だった





なぜ殺したのか

※同じことを聞く× × × の浅はかさをこの後呪うことになる

これ以上失いたくなかった、失うくらいなら無くしてしまおうと思った





手に入らないならば一緒だから

※手を震わせ自分の思いを話すことで整理しながら語る




無くなって気付いたがなきゃダメだった!!!!!もう何も無い!!!!!

何も残っていない!!!!!

※突如として大声で叫んだ



どうしようもないなぜやってしまったのか、落ち着いて考えればわかる事だった

※冷静にたんたんと言葉を繋いでいく

その落差に× × × は驚きそして後悔した

質問を続けたことを

真面目な自分を




居なくなるだけだったのに、いつか戻ってきたかもしれないのに、生きてるだけで幸せだったのに

見てるだけで良かったのに

※涙を流し先程の叫びはどこへ行ったのか、あの無垢な笑顔からは想像も出来ない程くしゃくしゃの顔をして絞り出すように言った














多くを望んでしまった

手に入れたいと思ってしまった













ひとつを手に入れて手に入ると錯覚してしまったのかもしれない

手に入ることが当たり前になってしまったのかもしれない

当たり前を当たり前として受け入れてしまった

※嗚咽を漏らしながら後悔を滲ませている





そして突然顔の表情がすっと無くなったかのような顔になると










なのに壊してしまった













もう何も無い






そう言い残しそれ以降一言も発しなかった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る