魔物使いの異世界大陸平定記

ボルトコボルト

第一章 深淵の樹海

第1話 スライム

右の頬が冷たい何かに撫でられて目が覚めた。

白い蛇の舌が俺の頬をなめていた。

30cmくらいの小さな白い蛇。


目の前の白い蛇は神々しいぐらい真っ白。

とても綺麗。

マリンブルーの透き通るような優しい目をしていた。


ちょっとびっくりしたが、白い蛇は首を傾げている仕草が可愛いし、敵意もなさそうなので笑って許そう。


上半身を起こす。

白い蛇の頭を撫でながらあたりを見渡すと、森の中のちょっと開けた場所の様だ。


あれ?

たしか病院のベッドで寝ていたはず。


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俺はブラックな会社で働いていたシステムエンジニア。

名前は「佐藤 大翔(サトウ ヒロト)」年齢35歳。


1ヶ月の残業は平均100時間。

システムの納品前に急に担当していた部下が入院。

上司だった俺は引継ぎ無しで代わりにシステムを完成させる事になった。

案の定スケジュールは遅れ気味。

一月の残業時間は250時間を越えた。


死ぬほど働く事となり、何とか納品を済ませた。

その後、体を壊して入院するはめになった。


まあ、保険にも入っているし、良い休養と考えた。

のんびりしようとスマホで「異世界転移」系の小説を無料で読みまくっていた。


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足元の草も周りの木々も見たことが無い形で草は細長くクネクネと曲がっており、木々も黒みがかって曲がっている。


あきらかに日本には無い場所だ。

「この状況って、異世界転移!?」


俺は異世界転移したみたいだ。

これはいいぞ!

あこがれの異世界転移!

チートになって『俺Tueeeee』出来るのか!?


とりあえず、小説で見た呪文を色々唱えてみる。

「ステータスオープン!」

「鑑定!」

「メニューオープン!」

「ファイアボール」

・・・・・・

なにも起きないぞ?


右をみると小さい白い蛇が首を傾げている。

(ちょっとかわいい。)


隣にいる白い蛇をみながら「テイム!」と唱えたら頭の中にメッセージが流れた。


<レベル差があるため、テイム出来ません>

おや、レベル差があるためって・・・

レベル差が無ければテイム出来そうだ。

レベルがある世界らしいぞ。


周りをみると、スライムの様な魔物を見つけた。

青っぽい透明でプルプルしている。

大きさは握り拳くらい。

目と口はあるが、鼻はない。

多分スライムだ。

スライムはゲームでも大抵レベルが低いのでテイム出来るな。


スライムに向かって「テイム」と唱えた。

スライムは首を傾げたように一瞬斜めになった後、頭の中にメッセージが流れる。

<スライムをテイムしました。>


スライム(あれ?)

頭の中に声が聞こえてきた。

テイムした眷属とは念話で会話出来るみたいだぞ。


(俺はヒロト、宜しくね、スライムさんの名前を教えて。)

頭の中でスライムに話しかけてみる。


スライム(名前?・・・名前・・・ない・・・)


お、通じたようだ。

(それじゃ、名前をつけよう。君は雄、それとも雌?)


スライム(・・・雄)

(ふーむ、それでは君の名前は『スラオ』だ。)

スラオ(・・・はい。)


すると頭の中にメッセージが流れた。

<スラオがネームドモンスターになりました。>


ネームドモンスター?何か良いことがあるのかなぁ?

(スラオは名前を貰って何か変わった?)

スラオ(ん~、分かんない)

(そっか~、ところでスラオは何が出来るの?)

スラオ(・・・消化吸収。)

(色々役に立ちそうだから、後でなにかを消化してもらうね。)


ここはどこだ。

人間が住んでる村や町は近くにあるのか?

スラオに色々きいてみた。

スラオ(分かんない)

分からないらしい。


う~ん、やはりステータスが見えないと色々不便だぞ。

言葉が通じないかも知れないから、人がいる場所にも行けないし、どうしよう・・・


でもこの状況はなんだろう?

不親切極まりない。

何の説明も無い。

いきなり異世界に転移させられた?


白い空間の神様と会ってない。

異世界召還した王女様がいる訳でもない。

ステータスも全然見れない。


自分をまじまじとみてみた。

着ている服は黒いパーカーとジーパン。

それと合成樹脂で出来た丸い穴があいている

ベルトを足の甲か踵にセットすることが出来るあのメーカーの黒いサンダル。

病院に入院した時に来ていた服だ。


持ち物は何もない・・・・・

なんか身体は小さくなっているようだ。

俺は35歳、175cmなんだけど、

中学生くらいに戻ったようだ。

多分身長は150cmぐらいか。

体力もなさそう・・詰んだかも・・・ふう。

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