第3話 カエルレース (=池✖車✖魅惑的なカエル+ギャグコメ)

「さて、本日もやって参りました、カエルレースの時間です。いや、晴れですね、解説のハジメさん」


「えぇ、晴れましたね、実況のユースケさん」


「私達にとっては、絶好の観戦日和ですが、選手にとっては過酷な環境といえるでしょう」


「そうですね、まぁ、カエルですからね」


「コースは一直線です。スタート地点はハシノ池、そしてゴールは道路脇にあるカエル岩です」


「カエルの形をした岩ですね」


「カエル岩に到達した選手の勝利です」


「わかりやすくていいですね」


「さて、今日こそは勝利者が出るのでしょうか?」


「出るといいですねぇ」


「まぁ、どっちでもいいですけどね」


「カエルですからね」


「今回で3回目となるこのカエルレースですが、始まりは、ハジメさんがこのカエルの特性に気づいたことでした」


「偶然でしたね」


「ハシノ池のカエルは、どういうわけか、あのカエル岩に集まるという習性があります。私達にはわかりませんが、カエル岩はよっぽど魅惑的なんですかね」


「セクシーなんでしょうね」


「あ、メスなんですか?」


「え。オスなんですか?」


「「……」」


「「どっちでもいいですね」」


「はい、というわけで、実況を続けさせていただきます。おっと、ついに一匹目が動き出しました」


「やっとですね」


「ぴょこ太と名付けましょうか。よく発達した大腿筋ふとももきんですね。太腿がものすごく太いですよ」


「カエルですからね」


「ステップも軽やかです。これは期待できますね。さぁ、ぴょこ太は道路を渡り切れるのでしょうか」



 ……。



「「轢かれたぁ!!」」



「あっという間の決着となりましたね、ハジメさん」


「1ピョンでしたね」


「そこまで車の通りが多いわけではないんですけど、タイミングがわるかった、ということでしょうか。見通しもわるくないので、避けられなくもなかったと思いますが」


「まぁ、カエルですからね」


「さて、続いて二番手の、えぇ、名前は……」


「「轢かれたぁ!」」




「名前を考える間もありませんでしたね、ハジメさん」


「いささかフライング気味でしたね」


「せめて名前を考える時間くらい待ってくれませんかね。カエルといえども、ルールくらいは守ってほしいものです」


「知ったこっちゃないでしょうけどね」


「気を取り直していきましょう。続いての選手は、ぴょん一郎です。この選手は、また一回り大きいですね。脚力には期待できそうです」


「道路をひとっ跳びできそうです」


「それはないです」


「カエルですからね」


「いくら脚力があろうと車に撥ねられればイチコロですが、おっと、ぴょん一郎、様子を伺っているようです。これは、まさか、信号待ちをしているのでしょうか?」


「確かに近くに横断歩道はありますね」


「横断歩道が青になるタイミングで動きだすつもりなのでしょうか。これは、なかなか理知的なカエルですね」


「たまたまだと思いますよ」


「信号は、たった今赤になりました。車が止まりました。おぉ! ぴょん一郎が動き出しました! これはいいスタートだ」


「絶好のタイミングですね。これは、ひょっとするかもしれませんよ」


「軽快に跳ねていきます。予想通り、脚力は凄まじい。あっという間に道路の中央ラインに到達します」


「ここの信号の待ち時間は、そこまで長くありませんが、このペースならば間に合うかもしれませんね」


「一度、中央ラインで一休みして、再び跳ねます。少し疲れたのでしょうか。ペースが落ちています」


「短距離選手だったんでしょうか」


「ここまできたら辿り着いてほしいところです。ぴょん一郎、跳ねる、そして跳ねる。さぁ、あと一息だ。がんばれ、ぴょん一郎!」


「「……ん?」」


「動かなくなりましたね、ハジメさん」


「動かないですね、ユースケさん」



……。



「「干からびたぁ!」」



「ぴょん一郎、ゴール手前で干からびました! この炎天下、コンクリートは熱されて灼熱と化しています。人間でも火傷しそうなのですから、カエルであれば尚更です」


「焼肉、食べたいですね」


「惜しいところまで行きましたが、ゴールならず」


「まぁ、ゴールした先にあるのは岩ですけどね」


「いえ、もはや、あの岩はただの岩ではないのかもしれません。自らの身体を潰されても、焼かれても辿り着きたいカエル岩。生存本能のためか、それとも栄光を手に入れるためか」


「ねぇ、ユースケくん、もう飽きた」


「あ、そう? さぁ、ハジメさんが飽きたため、ここで今回のレースは幕を閉じることとなります。果たして、今後、ゴールできるカエルは、今後現れるのでしょうか」


「この後、何する?」


「蟻の巣脱出ゲームとか、どう?」


「いいね」

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