第50話 レッドフェスティバル

新たな仲間、キルカは女性が好きなレズビアン少女であった。

キルカの魔の手によって、ライカは辱められる。そして今、ほかのメンバーにも魔の手が伸びる・・・


キルカの過激なヒモ水着に、顔を赤らめて、怒鳴り散らすスノーラと言葉を失うルド。

そんな2人を放っておいて、キルカは視界には、日陰で休んでいるセリアを捕えた。

セリアはもともと体が弱いため、強い暑さにさらされたらバテてしまうのだ。

「(ライカのような気の強い女も良いが、セリアのような弱々しい女もなかなか良いな・・・)」

妖艶な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づくキルカ。

その尋常ではない雰囲気に、スノーラは慌ててプールから出て、2人の間に入る。

「きっ貴様! セリア様に何をする気だ!?」

キルカは平然とした表情でこう答える。

「何を熱くなっているのだ? 我はセリアの様子を見ようとしただけだ」

「あのようないやらしい笑みを浮かべる女が弱っているセリア様に近づこうとしているのを見れば、止めに入るのは当然だ!」

ヒートアップするスノーラにプールから上がったルドがなだめる。

「落ち着けよスノーラ、 確かにあの笑みは気になるけど、本当に心配してるだけかもしれねぇじゃねぇか」

「・・・私にはとてもそうは思えん」

全く信用しようとしないスノーラに、キルカは呆れたようなため息をつく。

「冷たいものでも飲んで、少し頭を冷やせ」

キルカは、横になっているセリアの横にある、クーラーボックスを開け、そこから水を取り出す。

そのクーラーボックスは、熱中症を心配したゴウマが用意し、夜光に運ばせたものである。

中には氷の心石が入っているので、入れてある飲み物はとても冷たい。

キルカはクーラーボックスのそばに置いてあるカップに水を注いでいく。

その様子を見ていたセリナが、急いでキルカに駆け寄る。

「キルカちゃん! 私にもお水ちょうだい!」

「あぁ。 少し待っていろ」


優しく水を用意するキルカを見て、ルドはスノーラに「思いやりのある良い奴じゃねぇか?」と投げかける。

「う~ん・・・」

キルカがわからなくなり、頭を抱えてしまったスノーラ。


カップに水を汲み終わったキルカは、メンバー達に水を配る。

「ゴクゴク・・・ぷはっ!冷たくておいしい~!」

「ゴクゴク・・・暑い中で飲む冷たい水って言うにはなかなか良いもんだな!」

豪快に水を飲むセリナとルド。

「セリア様。 お身体の方は大丈夫ですか?」

キルカからもらった水をゆっくり飲むセリアを心配し、声を掛けるスノーラ。

「・・・はい。 ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした」

「謝る必要はありません。くれぐれも無理をなさらないようにしてください」

「・・・はい」

セリアの体調を確認したスノーラも、持っていたカップの水を飲み干すと、再びキルカに視線を向ける。


「・・・キルカ、お前が思いやりのある奴だというのはわかった。いきなり大声で怒鳴ったことは詫びよう。 だがやはり、その水着はいくらなんでも過激すぎ・・・だ・・・ぞ・・・」

その時だった。 スノーラは体にある異常を覚えた。

「なっなんだ? この火照ったような感じは・・・」

スノーラは顔を赤らめ、全身から力が抜けてしまい、思わず膝を着いた。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・こっこれはいったい、どうなっているんだ?」

状況が飲み込めないスノーラに、キルカはゆっくりと近づく。

「ほう・・・”あれ”を飲んで自我を保っているとは、大したものだ」

その口ぶりから、先ほど飲んだ水にキルカが何かを入れたと理解したスノーラ。

「きっ貴様!? 私達に何を飲ませたのだ!?」

キルカを睨みつけながら、尋ねるスノーラに対し、キルカは胸の間から小さな小瓶を取り出す。

「そう怒るな。 別に毒ではない。 これは即効性の媚薬だ。飲めば数秒で体が火照り、自ら快楽を求めてしまう効果を持つ」

「びっ媚薬だと!? なぜそんなものを!?」

「ふっ。 たまには自分以外の女達が体を重ねるのを見るのも一興と思ってな」

いやらしい笑みを浮かべるキルカに、スノーラは一発殴りたいと心の底から思った。

だが体が思うように動かないため、それは叶わない。

「そんなに怖い顔をするな。 お前もあの2人のように楽しんだらどうだ?」

キルカの視線の先にいたのは・・・

「はあ・・・はあ・・・ルドちゃんのおっぱいってほんとおっきい~」

ルドの爆乳に顔をうずめながら、子供のように甘えるセリナと・・・

「せっセリナの肌ってすべすべしてて柔らかいんだな・・・」

セリナを抱きしめながら体を舐め回すようにまさぐるルドの姿であった。

その上、2人共水着を脱いで全裸となっている。

「なななな、何をしているのですかぁぁぁ!?」

思わず叫ぶスノーラ。

「2人は快楽を楽しんでいるだけだ。 邪魔をするのは野暮というものだぞ?」

「ふざけるな!! 2人を元に戻せ!!」

「安心しろ。この媚薬の効果は10分で消える。 放っておけばすぐ元に戻る・・・それより、さっきから”彼女”が物欲しそうな目で待っているぞ?」

スノーラはとてつもなく嫌な予感を抱き、”ゆっくりと”彼女”の方に視線を向ける。

「す・・・スノーラさぁぁぁん」

それは、妖艶な顔でスノーラに歩み寄るセリアであった。

「せっセリア様! 目を覚ましてください!」

スノーラの願いは届かず、セリアはスノーラに抱き着いてしまう。

「あれぇ? こんなに暑いのに、なんで水着なんて着ているのでしょうか?・・・えぇぇぇい!脱いじゃえ!」

豪快に水着を脱いで全裸となるセリア。

「せせセリア様! 水着を脱いではいけません!・・・というか、いつもより少々明るくなっているのような・・・」

これも媚薬のせいなのだろうか?セリアはまるでセリナのように、よくしゃべる明るい少女へと変わっていた。

それはそれで良いように思えるかもしれないが、状況が状況なだけにスノーラは全く喜べない。

「ほら、スノーラさんも脱ぎ脱ぎしましょう?」

そう言うと、スノーラの水着を脱がすセリア。

「おっおやめください! セリア様!」

しかし、その言葉は届かず、セリアの手によって水着を脱がせられるスノーラ。

「スノーラさん、こんなに胸が大きいのに、引き締まって細い腰をお持ちだなんてずるいです・・・あれっ?」

スノーラの水着を脱がせていたセリアが、水着に中からあるものを見つけた。

「なんでスノーラさんの水着から胸パッドが出てきたのしょうか?」

セリアが見つけたのは、胸を大きく見せるために使われる胸パッドであった。

「せっセリア様!! それを返してください!!」

スノーラの胸は90以上ある巨乳。とてもパッドが必要だとは思えない。

キルカはそんなスノーラの行動に、ふとこんなことを思う。

「その乳で必要のない胸パッドなど付けるとは、意中の男の気でも引こうとしたのか?」

それを聞いた途端、スノーラの顔はますます赤くなった。

「きっ貴様には関係ない!」

その動揺から、それが正解だとセリアとキルカは理解した。

「あー!わかりました! その大きな胸で夜光さんを誘惑しようとしてたんですね! スノーラさんもずいぶん破廉恥な方ですね」

「いいいえ、決してそのようなことは・・・」

「ふふ、まあいいです。 それより、もう我慢できません・・・スノーラさん、私と気持ちよくなりましょうね」

セリアは自ら全裸となり、スノーラの首筋にキスをする。

「せっセリア様、おっおやめください!」

「だ~め」

スノーラの耳元でささやくセリア。

それが引き金となったのか、スノーラの顔も徐々に妖艶になっていく。

「せっセリアさまぁぁぁ」

互いの胸を揉みしだき、そして、ついに互いの口を合わせようとした・・・その時だった!

「いい加減にしなさぁぁぁい!!」

それは、更衣室から半裸の状態で飛び出してきた、ライカの叫び声であった・・・


辺りは一瞬、静寂に包まれた・・・

その時・・・

「何やってんだ?お前ら」

今までずっと、水死体のように浮かんでいた夜光が水を飲もうとプールから上がってきたのだ。

状況がよくわからない夜光をよそに、ライカがキルカに駆け寄る。

「この変態女!! よくもあたしにあんな辱めを!! その上、セリア達まで!!」

キレるライカに、キルカは若干不満そうに言う。

「辱めとは心外だ。 あれは愛だと言っただろう?」

「何が愛よ!! あんたは媚薬を使ってあたし達を混乱させただけでしょうが!!」

ライカは手に持っていた小瓶を地面に投げ捨てた。

「さっきのも、この媚薬をこっそりあたしの体に塗りつけたのが原因でしょう!?」

「・・・バレていたか」

キルカは全く悪びれずにそう返した・・・


それからまもなく、媚薬の効果が切れ、セリア達は元に戻った。

幸か不幸か、スノーラとライカ以外のメンバーは媚薬を飲んだ後のことを全く覚えていなかった。

こうして、新たなメンバーを加えた最初のマイコミは、なんとも艶やかな時間となったのであった・・・


キルカはあの騒動以来、マイコミマイコミメンバー全員から避けられるようになっていた。

当の本人は全く気にしていないどころか、懲りずにマイコミメンバーやほかの訓練生やデイケアメンバー、女性スタッフにも手を出している。

ホーム内では同性のため、体をまさぐられてもセクハラかどうか微妙なので、笑騎よりたちが悪いと言われている。


プール騒動から1週間経ったある日のマイコミルーム・・・

「・・・レッドフェスティバル? なんだよそれ」

スノーラの口から飛び出した謎のワードに、夜光は首を傾げる。

「はあ、やはりご存じなかったのですね・・・」

呆れたようにため息をつくスノーラに、夜光は「呆れてないでとっとと答えろ」と急かす。

「レッドフェスティバルとは、1ヶ月後にホーム内で行われる夏のイベントのことです。

レッドフェスティバルでは、各デイケアプログラムが、何らかの出し物を用意して、家族や友人を招待することになっています」

スノーラの説明の跡、夜光は嫌そうな顔でこう言う。

「またイベントかよ!? この間、海に行ったばかりじゃねぇか!!」

「それは就労側のイベントです。 今回はデイケア側で行われるイベントなので、我々も出し物を用意しないといけません」

「マジかよ・・・ダル・・・」

夜光は昨日直ったばかりの冷房の前に立ち、現実を忘れようと涼しむ。

そこへ横で水を飲んでいたルドが夜光に尋ねた。

「兄貴なんで知らねぇんだ? 昨日スタッフの説明会があったって、ゴウマ国王が言ってたけど・・・」

「そんな面倒なもんパスしてやった」

全く悪びれる様子もない夜光の態度に、ルドとスノーラのため息が止まらない。

「そうだと思って、ゴウマ国王からこれを預りました」

スノーラはゴウマから預っていたレッドフェスティバルの企画書をテーブルに並べた。

「あとで、目を通してください」

スノーラがそれ以上何も言わなくなると、夜光の横で 冷房で涼んでいたセリナがふと辺りを見渡す。

「ねぇ、ライカちゃんの姿が見えないけど・・・」

部屋の中を見渡すと、確かにライカの姿はない。

そこへ、読書をしていたセリアが、本を閉じて、手を上げる。

「あっあの・・・ライカさんは、演劇プログラムに参加するので、きょきょ今日はお休みするとの伝言をうけました。 つっ伝え忘れてしまって、もも申し訳ありません」

深々と頭を下げるセリアに、「そんなに気にしないで」とセリナが励ます。

「そういえばあいつここの所、演劇プログラムに入り浸っているよな?」

ルドの言う通り、ここ最近のライカは、演劇プログラムでの練習時間を普段より伸ばしている。

そのため、よくマイコミも途中で早退することもある。

「仕方あるまい。 レッドフェスティバルの特別ゲストにあの”マスクナ ビュール”が来ることになっているからな」

「マスク・・・誰だ?それ」

聞き覚えのないワードに再び首を傾げる夜光。

「マスクナ ビュール。 ”劇団トレック”という人気の劇団に所属している、ナンバー1女優です。

舞台俳優や女優を目指す方々のほとんどが彼女を目標にしているほどの有名人が、演劇プログラムを見学するようなので、ライカもはりきっているようです」

「ほう。 ナンバー1ってことは、相当の美人なんだろうな・・・」

夜光の目つきがいやらしく光る・・・


そしてこの日から、夜光達マイコミは、レッドフェスティバルに向けての企画を考えることになった・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る