第25話ノラ対ソロC
私は主人と二人っきりで久しぶりの散歩をしていた。
ザクッザクッザクッ
街の中にも草の生えるところはある。
私のあとをまるでアピールでもするように草を踏みしめてくる、犬、、か?
独特の獣臭さとそれにしては軽い足音。
しかし、
_大型犬だな。
私より体は大きいらしい。
よぉ、飼い犬。
躾のないバカが私に声をかけてきた。
そっちは飼っても貰えないらしいな可哀想に。
何だと!?
言われたから返しただけだ。
ケンカなど売ってはいない。
_売る価値もない。
しかし、ノラが市街地でこんな風にケンカを売ってくるとはどういうことだ。
「ソロあっちいこ」
そうだな。
私には関係ない。
逃げんのかよ?
吠えていろ。
そして勝手にxんでいろ。
すまない言い過ぎた。
興味がないものにそこまでする義理はないか。
おぃ待てよ!
まだ何か用か。
お前もその人間にいつか捨てられるんじゃねぇのか?
そうかもな?
人間なんてそんなくだらないもののために従って何になるってんだよ?
私はそうは思わない。
例え捨てられたとしてもそれが主人の都合なら仕方ないことだろう。
私は主人の都合に合わせる。
それが私の忠義というものだ。
ケッそうかよ!勝手にしろ!
あぁ勝手にさせてもらう。
お前もいい主人に巡り会えるといいな。
お前とは仲間になれそうだと思ったんだがな。
勝手なことを言うな私には無理だ。
それで私は話をやめ、ノラに見せつけるように主人にじゃれついた。
「わ、こらソロ」
また主人は耐えられずによろけて近くの標識に頭をぶつけていた。
コォン
その反響音に捨てられた思い出を重ねながら私はノラを背に歩いていく。
そうあれは私が前の主人に買って貰った日のこと、、
ペットショップなどという不届きな店に私がまだ飼育されていた時のこと。
「うわぁこの子欲しい!」
人をもののように言う子供は私を指差して親にねだっていた。
当時の私はそんなこともわからずにただきゅんきゅんとテキトーに鳴いていた。
「ちゃんと責任持って育てられる?」
「うん」とたぶんろくに責任の意味もわからないだろう子供が私欲しさに頷いていた。
「よし!お母さんが奮発しちゃう!」
これが私の悲劇の始まりだった。
文字通り3日で飽きられた私は例の心ない箱に詰められ、商店街の路地裏に捨てられた。
今思えばあんなところに置いて、拾ってもらう気などなかったのだろうなと思った。
雨風が直接当たるような場所、とてもじゃないが正気とは思えなかった。
しかも私は年端も行かぬ幼年期。
意図して置いたとすれば尚悪い。
_大丈夫?
数日間そこに放置された私はたまらず箱を捨てて、自らエサを探し始めた。
単純な生存本能からだったと思う。
ザァザァザァザァ
強く降りしきる雨足の中で
_怪我してない?
ザァザァザァザァ
バシャッ
私が倒れるのが先か、傘が落ちるのが先か、、
うっすらとした意識の中、その子が泣きながら泥まみれの私を抱いている姿だけはたしかに記憶している。
飼われるべきはこの人しかいない、そう思うと私は自然に体を預けるのだった。
おぃまだ酔ってんのかよ?
何だまだいたのか。
追っ払ったと思っていたノラが1メートルほど離して着いてきていた。
主人すまないが、少し速度を上げる。
「わ、ソロ!」
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