第615話
キッカとシルオールは冒険者ギルドから呼び出されて、いま冒険者ギルドの応接室に来ていた。裏ギルド長であるエリーがいない今、冒険者ギルドは表のギルド長の細い
「キッカさん、シルオールさん。お忙しい中、お呼び立てしてしまい申し訳ありません」
「いや、ユーリカからギルド長を引き継いだ直後にあの事件だ。まだ混乱が続いているのだろう?」
「…………はい。一度引退した冒険者の皆さんが、復興のために一時的ではありますが復帰してくださいました。ルーフォートやヤスカ村、セイマール地方など被害が出た町や村に分かれてもらいました」
「ほかの国の被害状況はどうだ?」
「……おかしいんです」
「おかしい?」
キッカのおうむ返しに新しいギルド長に就任したファビュアが困った表情で頷く。
冒険者ギルドの副ギルドマスターだったファビュアは、ユーリカが兄たちと共に暮らすため
「こちらをご覧ください」
差し出された書類に2人は目を通す。そこには各国の被害状況が書かれていた。
「どこの国も王都は無事なのか……」
「そうです。沈んだタムスロン大陸以外で王都が崩壊した国はありません」
まるで国を滅ぼす気はなかったというのか、それ以外に理由があったのか。それは神の加護があったのだろうか。
「プリクエン大陸は無傷なのか」
「はい。ユーリカからの情報では、小さな農村にも被害は一切なかったそうです。冬の間に戦争が終わり、今は後処理の最中だそうです。そしてタグリシア国からは支援として大量の食材が届いています」
ファビュアがなぜ2人を呼んだのか、ようやく合点がいった。復興支援にばかり気がいっていて、食材のために魔物を倒していない。それを放置すれば魔物による
「すまない。復興も大事だが魔物の間引きをしなければいけなかった」
「それだけではない。……昔、エアさんが魔物の棲息を調べてくれたおかげで被害が
「そのとおりです。それに気付かず、後手に回ってしまいました。……皆さんのパーティも大きな被害を受けられたのですが…………上級冒険者は皆さんのパーティ以外には、もう……」
申し訳なさそうに俯くファビュア。机の下に隠された両手は震えているのだろう。袖が小さく揺れていた。
「ファビュア、ギルマス。俺たちに命じてくれ、何をしてほしいかを」
「ユーリカたちを無事に送り届けた連中がもうすぐ戻ってくる。タグリシアには冒険者たちの町があり、そこからベテランの冒険者たちがやってくる。ここにきて挨拶するから指示をしてやってくれ」
ファビュアはシルオールの言葉に表情を
「そんなに固くならなくていい。彼らに魔物討伐か復興のどちらか、魔物の討伐でも依頼にそってもらうのかダンジョンで食材集めを頼むのか。そのダンジョンも王都の周辺か、ルーフォートなど別の場所にあるダンジョンで、そこの町や村で消費されるためのものか」
そう説明されて、やっと理解できたのだろう。ほうっと安心した表情を見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。