第428話


「エリーさん、オボロさん。これからいうことは仮定です。それを理解した上で話を聞いてください」


二人にそう注意すると戸惑いつつも頷いてくれた。


「大丈夫だ。この二人は私たちが必ず止める」

「ええ、私が止めるから大丈夫よ」

「どういうことよ、それ」

「二人が物事を深く考えられないってことだ。相手の言葉を鵜呑みにするだろう?」

「だいたい、エリーもエリーよ。何でも他人ひとから答えをもらうんじゃなくて、少しは自分で考えなさいよ」


私が何を気にしているのか気付いた……? 信用していないことも?


「エミリアちゃん、二人が答えに辿り着けるようになるまで休憩にしようか」


アルマンさんが笑いながら私の前に置いた世界大全集の表紙をめくった。



「ウ〜ランベシカ、ウ〜ランベ〜シカ」


世界大全集を開いてウランベシカのページを探す。


「あ〜った! って…………あれ? 竜人のこと、何にも書かれていないよ。なんで?」


世界大全集には竜人のことは記載されていなかった。書いてあるのは、近隣国を圧倒的な強さで叩き潰して国土を拡げているということ。


「不確かなことは記載されないのよ」

「じゃあ、竜人は?」

「この場合、国民の一種族って判断されているわね。立国の時点でいたからじゃないかしら」

「ねえ……それでも立国前の記録すらないのはなぜ?」


そう、ウランベシカ大国がウランベシカ立国と名を変えたか興したのかわからないが、間違いなく『はじまりの記録』はあるはず。ほかの国…………このタグリシア国の興りも、ダンジョン都市シティの成り立ちも詳細に載っているのに。


「騰蛇とか神獣たちのことは、やっぱり秘匿されてるけど……。でも外周部のことまででてるんだよ。王都なんて、妖精たちに何度も砂に変えられたことも、妖精の罰で国王たちが髪を抜かれたのも。外周部で男娼してるのだって……神の罰なのに、神が関係してるのに載ってるよ」

「それがないってことは、神が関わっているの?」

「国の存亡に神が関わるって……どういうことだ?」


私の言葉に、世界全集を開こうと手を伸ばしたエリーさんだったが、『すっぱーんっ!』という私とダイバには聞き慣れた音がした。

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