第400話
〈よいか? 我は『討伐禁止』じゃ。かる〜くじゃれ合う程度ならよいが、傷つけるのは禁止じゃ〉
「え〜、そうなの?」
《 徹底的に遊んじゃダメ〜? 》
《 全力で遊んじゃダメェ〜? 》
「残念だね〜」
《 ね〜 》
私たちが本気で残念がると火龍がまた心配そうに確認をする。
〈こやつらは我をどうみておるんじゃ?〉
「全力で遊んでも死なない相手」
火龍は大きな顔をダイバの横に近付けて小声で話すが、私はまだダイバの膝の上。私にも十分声は届く。ダイバは分かっているから、普通の音量で話している。
「だって、魔法攻撃は
《 でしょ? 》
《 でしょでしょ? 》
《 だから遊び相手でしょ? 》
《 倒し放題ってことでしょ? 》
《 でしょ? 》
「でしょ、でしょ?」
〈『でしょ?』ではない。エミリアも一緒になって何を可愛くいっておる。ダメなもんはダメじゃ〉
火龍が私たちに言い聞かせるように優しく注意する。それを聞いて、ゴゴゴ……と地面が小さく揺れる。
「ほら、お前らがバカなことを言うから騰蛇が笑い転げているじゃないか」
たしかにダイバのいうとおり、小さな揺れが長い間揺れている。
「じゃあ、騰蛇が遊んでくれるの?」
そう聞いたら、ピタッと揺れが止まった。騰蛇の拒否や否定の合図だ。
〈こらこら、騰蛇の。同じ火の神の眷属として我を助けようとは思わぬのか?〉
火龍の言葉に騰蛇は返事をしない。下手に揺れて、勝手な解釈をされて巻き込まれるのをさけているのだ。
「思わん、思わん」
《 思うんだったら、今までだって遊んでくれているよね〜 》
《 地中に引き込んだ悪い人で一緒に遊ぶけど、騰蛇が遊ばれたことはないよねー 》
ゴゴゴッと小さく揺れる。『一緒に遊ぶ』に同意しているのだろう。
「今度、騰蛇と一緒に遊ぶ?」
《 今度、一緒に騰蛇で遊ぶ? 》
《 あとで騰蛇と一緒に火龍で遊ぶ? 》
《 あとで一緒に騰蛇と火龍をやっつける? 》
どんどん話がずれている。『一緒に』の位置を変えるだけで大きく意味が違っていくのがおかしい。
「お前ら、遅くなるとアゴールに遊ばれるぞ」
《 うわっ! 》
《 それは勘弁して! 》
「謹んでダイバに……」
「エミリアも一緒だぞ」
「……出産まで
《 エミリア、そのときはピピンたちが『アゴールを飲み込んであげる』だって 》
「……もしものときは頼む」
《 頼まれたー♪ 》
ダイバの言葉に妖精たちもピピンたちも楽しそうに手と触手を上げた。
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