第362話
「エミリアちゃんは完全にコルデの娘になったな」
そう言って笑っているアルマンさん。向かいに座る私の左横にはコルデさんが、右横にはエリーさんが座り、私自身はミリィさんの膝の上だ。
オボロさんの言うとおり、散歩にでようとしてミリィさんに見つかった結果、みんなに見張られている状態なのだ。
「
「『今日は一緒にいられないから調合や錬金はダメ』って妖精たちに言われたわよね」
「白虎〜、お昼寝しよ〜」
ガウ
「あら? 『夜に寝られなくなるからダメって言われたよ』ですって」
ガウガウッ
「今日は疲れているから、寝ちゃったら明日の朝まで起きない、ですって」
その結果、今はミリィさんの膝の上でスイーツを食べている。
「エミリアさん、それは……」
「『ジェフェールの限定スイーツ』じゃないですか!」
「…………なの?」
スプーンをくわえたままコテンと首を傾げたら「カワイイ」と小さな声があちこちであがった。
「テントの食材倉庫に入ってるの。ピピンと
そう言うとピピンが上下に揺れる。いま食べているのはフルーツいっぱいのロールケーキだ。
「エミリアさん、そのロールケーキってまだありますか?」
「やめんか、みっともない」
キッカさんが止めているけど、これは確かキッカさんが作ったんだっけ。皆さんには内緒って約束したんだもんね。
「私、わかんない。妖精たちと一緒に食べる……し?」
ロールケーキを食べながら皆さんの話を聞いていたら、皆さんがキョトンとした表情で私を見ていた。
「なに?」
そう言って首を傾げたら、白虎に鼻頭をペロンと舐められた。
「やだぁ、くすぐった〜い」
「お前ら、何やってるんだ?」
鼻頭だけでなく頬や口まわりまで白虎に舐められていると、テントにダイバが入ってきていた。
「ダイバ〜」
「エミリアちゃんがロールケーキを食べていたのよ」
「ああ、いつものか」
ダイバがそういって私に『浄化』をかけてくれた。
「お前はなんで上手に食えないんだ?」
「……クリームが口から逃げていくの」
いつもクリームが頬や口まわりについていて、そのたびに白虎に舐めまくられる。
「エミリアちゃん、スプーンの裏にクリームがついているのに気付かないから。それではねたのがくっついちゃうのよ」
「ミリィ、それがわかっているなら注意してやるか食わせてやれ」
「あら、カワイイじゃない。顔にクリームをくっつけて気付かないエミリアちゃんも。そんなエミリアちゃんの顔を舐めて取ろうとする白虎も。それがカワイイから、ピピンはわざとクリームたっぷりのスイーツをだしてるのよ、ねぇ」
ミリィさんの言葉を肯定するように上下に揺れるピピン。
「お前ら……」
「エミリアちゃん。明日のスイーツはフルーツパフェよ」
「わあ。なんのフルーツが入ってるかな♪」
「ルーバーに任せなさい」
明日が楽しみな私の隣では、ダイバとコルデさんが揉めはじめていた。
「……オヤジ。オフクロに何を送った」
「お? ワシは送ってないぞ」
「じゃあ、なんで『エミリアのプリン、いつ送る?』って聞いてきてるんだよ」
「あ、ひでぇ。俺がオフクロに頼んだのに」
「アニキかー!」
「……ダイバ」
両手をお椀のようにあわせてダイバに伸ばす。すると苦笑しながら頭を撫でられた。
「ここでちょうだいの手を伸ばすな。いま食ってただろ。明日はルーバーのフルーツパフェ。オフクロのプリンは明後日だ」
「今日は頑張った。だから晩ごはん……」
「晩ごはんのデザートにプリンだけ食うか、明後日まで我慢してオヤツに豪華なプリンアラモードを食うか。どっちがいい?」
「両方」
「それはなし」
「……プリンアラモード」
「よし。じゃあ、今日のご褒美はこれで我慢しろ」
そういって引っ込めていない私の器にしている手のひらにダイバが乗せたのは二本の瓶だった。
「わーい、ウルールだぁ!」
「夜の報告会にもちゃんとでろよ」
「でたら何かもらえる?」
「今日の晩ごはんは外でバーベキューだ」
「お肉? お魚?」
「両方だ」
「でる!」
即答した私にみんながクスクスと笑い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。