第351話


「えーと……なんだって?」

「エミリア。それは信じたくないから聞き直してるのか、聞いていなかったのか?」

「三番。ちゃんと聞いたけど、脳が情報処理を拒否した。再提出を求む」


うん、私のせいじゃない。久しぶりに理解できない内容を聞いただけだ。


「エミリアの」

「うん、うん」


ノーマンの言葉にコクコクと頷くとダイバが苦笑する。


「奴隷たちが」

「うん、うん」


今度はフーリさんたちが苦笑する。私の膝に乗ったフィムも一緒になってコクコクと頷くからだ。


「羨ましい」

「……そこで意味がまずわからない」

「そして」

「え? スルー?」

「……奴隷になるから働かせてほしい」

「だ〜か〜ら〜! そこもわかんな〜い! 何がどうしてそうなってるのよ〜!」


ここ数日、ダンジョン都市シティ内外でな事件が起きている。ここで『大小さまざま』じゃないのが騒動の原因。


「エミリアの奴隷たちが着ている服が目当てらしい」

「あれ? スーキィが取材した奴隷の話に『アラクネ製奴隷服』は記載していなかったよね」

「ああ、奴隷服に関しては載っていない」


ほかに奴隷の取材は受けていない。農園周辺も、魔導具の目隠しが使われている。エルフたちが奴隷として働いているため、野次馬というか見物者が湧いてでているらしい。

単純に、妖精たちのイタズラが暴走しないように思って魔導具を使ったのだが、逆に農園に入り込もうとするバカ者たちが増えたのだ。それはそのまま妖精たちの逆鱗に触れることとなった。


「さすがにこれはやりすぎでしょ」

《 僕たちは悪くない! 》

「悪い、悪くないって話じゃないの。、って言ってるの」

《 だって…… 》

「ここにいる妖精たちが全員非難されるんだよ。ここにいられなくなっていいの?」

《 …………やだぁ 》

「だったら、やりすぎはダメ!」

《 ……ごめんなさーい 》


このとき炭化させた男五人の目的は、奴隷服が置いてあるだろう集会所だった。盗んだ服を転売しようとしたらしい。


「集会所には『死んだ方がマシ』っていうトラップが用意してあったんだけどなぁ」


本人たちにそう言ったら青ざめてしまった。しかしこの男たちは治療後に不法侵入などで罪を償うことになり、守備隊の詰め所の地下牢にいるときに「奴隷になるから働かせろ」と言い出したらしい。


「こっちは怪我をしたんだぞ!」

「……で?」

「責任をとって働かせろ!」

「……で?」

「三食昼寝付きだ!」

「……で?」

「俺のいうとおりにしないならぶっ殺すぞ!」

「……誰を相手に言っていやがるんだ‼︎」


立ち会っていたノーマンの怒鳴り声でやっと黙った。自分が何を言ったのか気付いたのだろう。


「奴隷の分際で何様? だいたい犯罪奴隷なんぞがウチの農園で働かせてもらえると思っているのか!」


私がブチ切れると男は「犯罪奴隷が働けないなんて聞いてない」と慌てだした。


「雇うのは私だ! あー! もう‼︎ 地獄に堕ちろ!」


私の怒鳴り声と共に、目の前の檻はカラになった。……騰蛇に連れて行かれたのだ。

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