第328話


外周部に留まっている連中の最近の傾向が大きく変わった。

『ダンジョン都市シティに入れなかった / ここに来る途中で賞罰欄に罪名がついた / 帰りたいのに帰られない』という理由で残った者が今までは七割〜八割だった。それが、昨年から『木賃宿が目的 / 神の罰を受けた王族や貴族の男たちを見にきた / 今までの不満を、鬱憤を晴らしに』というものが三割となった。


「王族や貴族の女たちは?」

「ああ、男たちが毎月妊娠と出産を繰り返すからな。治療院の奥に新しく作った乳児園で子供たちを預かり育てている」

「ピピンたちに『罪深き欲望』を食われたからね。男連中が産む子供はその数イコール罪の証。『生まれた子供に罪はない』というけど、親から罪をはがして生まれるんだからなんだよね」


すでに子供たちのうち数十人は、各大陸の神殿に神官見習いとして引き取られていった。『神に遣わされて親の罪を浄化した』という理由だ。今までもそうして神官は増えていくようだ。


「どんなに信心深くとも、すべてを捨てて神に仕えるなどできません。ですが、この子たちのように親元で育てられることが難しく、どのようなしがらみからも解放された赤子でしたら、神殿の外の世界の誘惑に立ち向かい、純粋に神に仕えられます」

「無知だからこそ、色気や魅惑に負けませんか?」

「いいえ。この子たちは生まれながら『神の使徒』です。欲深い者が近寄れば火傷を負いますし、触れれば消滅します」


妖精たちの話では、この世界の神が役に立たない状態でも世界が成り立っていけるのは、こうした神の罰から生まれた子供には浄化スキルが備わっているから。悪意や邪な心を持つ者は、神々しくて近寄れないらしい。


「じゃあ、私たち聖女は?」

《 浄化スキルを持っているのに、悪意や邪な心を持つ連中が容易に近付ける 》

「………………私も光魔法を使っていらない連中を片っ端から焼滅させて浄化していい? いいよね。っちゃってもいいよね」

《 エミリア、目が怖い…… 》

《 って、いまの『しょうめつ』って 》

のどっち……? 》

《 ……どっちにしても、相手の生命はないよね。『ヤる』っていってるんだから 》


妖精たちが私の言葉に反応しているが、別の意味で暴走を始めた子たちもいる。


《 どうする? 光と火私たちっちゃう? 》

《 じゃあ、エミリアが魔法を使う前にっちゃおう 》

《 もう! そこの二人もエミリアと一緒に暴走妄想しないで止めなさいよ! 》


火と光の妖精たちの暴走を止めようとするくらやみの妖精。

あの子たちを止めるのに、私の言葉はいりません。だって……

バッチーン!

ピピンとリリンの触手ムチがあるからです。そして私の苛立った感情は……


「白虎ぉぉぉ」


白虎のモフモフで癒された。どんなことがあっても、最終的に大事おおごとにならないのが私たちのいいところ……かな?

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